- 2025.09.26
バイク大国ベトナムで変化?ハノイ市交通政策の行方
近年、経済成長と都市化が加速するベトナム。その中心都市ハノイでは、深刻化する交通渋滞と大気汚染を背景に、「ガソリンバイクの市内乗り入れ禁止」が議論されています。バイクは国民生活に欠かせない存在であるだけに、この政策は市民の関心と不安を大きく集めています。この記事では、規制の背景や市民の声、そして外国人居住者を含む生活者への影響について考察します。 ■ ベトナムにおける“バイク文化” ベトナムといえば“バイク大国”。特にハノイやホーチミンでは、通勤、買い物、子どもの送り迎えなど、日常のあらゆる場面でバイクが使われています。利便性は高い一方で、交通渋滞や排気ガスによる大気汚染は年々深刻化。私自身、現地を訪れた際に、道路を埋め尽くすバイクの波に圧倒されつつも、これが市民にとって「生活の足」なのだと強く感じました。 ■ 規制強化の背景と目的 ハノイ市がバイク規制に踏み切る背景には以下の要因があります。 ・慢性的な交通渋滞の緩 ・PM2.5を含む大気汚染対策 ・公共交通機関(BRT・メトロ)の利用促進 ・国のカーボンニュートラル目標への貢献 都市の持続的な発展を見据えた施策ですが、生活の中心にあるバイクを制限することは、市民にとって大きな負担にもなります。 ■ 市民の声と懸念 規制をめぐっては賛否が分かれています。 「通勤に欠かせない。代替手段がなければ困る」 「電動バイクは高すぎて手が届かない」 「環境対策は理解できるが、準備期間が短すぎる」 特に低所得層ほど影響が大きく、移動の自由や生活コストの上昇が懸念されています。外から見ると「環境のために仕方ない」と思いがちですが、日常生活に直結する問題だけに、現地では切実さが伝わってきます。 ■ 今後の課題と展望 規制を円滑に進めるためには、以下のような対応が求められるでしょう。 ・公共交通網の拡充と料金の適正化 ・電動バイクの普及支援と充電インフラ整備 ・移行期間を設けた段階的な規制 ・市民への十分な説明と合意形成 個人的には「一律禁止」よりも「段階的な移行」と「選択肢の提示」が不可欠だと思います。単に制限を課すだけでは、市民の反発を招き政策の実効性が損なわれる可能性があります。 ■ 外国人居住者への影響 ベトナムに住む外国人にとっても、この変化は無関係ではありません。これまで一般的だったレンタルバイクやGrabバイク利用に制限がかかれば、公共交通やカーシェアへの依存度が高まります。私自身も出張時にバイクタクシーを多用してきただけに、今後の規制が生活者の選択肢をどう変えるのか、注目しています。 ■ まとめ ハノイ市のバイク規制は、環境改善と都市交通の持続可能性を目指す大きな挑戦です。その一方で、市民生活への影響は大きく、社会的合意形成と実効的な代替策が欠かせません。都市化と環境問題のはざまで揺れるベトナム。この政策の行方は、市民や外国人居住者のライフスタイルを左右するだけでなく、アジアの他都市にとっても参考となる事例になるかもしれません。
- 2025.09.13
ベトナムにおける若手ブロックチェーン人材の台頭
近年、ベトナムのIT・スタートアップ業界では、若手人材によるブロックチェーン関連の革新的な取り組みが注目を集めています。都市部を中心に、ハノイやホーチミンの若者たちが自ら起業し、グローバル市場に向けたサービスやプロジェクトを次々と生み出しています。この記事では、ベトナムの若手ブロックチェーン人材の特徴や取り組み、そしてその背景にある社会的要因について考察します。 ■若手人材の特徴と挑戦 ベトナムのブロックチェーン分野で活躍する若者の特徴として、以下の点が挙げられます: 高い技術力と柔軟性:大学やオンライン学習で得た知識を実践的に応用し、従来の業界構造にとらわれないサービスを開発。 グローバル志向:英語や他国語による情報収集・発信能力が高く、国外のパートナーや投資家との連携もスムーズ。 リスクを恐れない起業精神:少人数チームで新規プロジェクトを立ち上げ、試行錯誤を繰り返しながらスピード感をもって市場に挑戦。 私の意見として、こうした若手の強みは「情報の速さ」と「柔軟な発想力」にあると考えます。日本や他国と比べて資金やインフラが整っていない環境だからこそ、創意工夫や効率的な技術活用が求められ、それが若手の強みをさらに際立たせています。 ■社会背景と市場の追い風 この動きを支える背景として、ベトナムの社会的要因も無視できません: 急速なデジタル化:モバイル決済やオンラインサービスの普及により、ブロックチェーン技術の導入が現実的に。 若年層人口の多さ:労働力人口の中心を占める若者が、新技術の採用やスタートアップ文化に敏感。 政府の支援政策:IT関連のスタートアップ支援やブロックチェーン技術研究への投資が増加。 これにより、ベトナムの若手起業家は国内市場に留まらず、国際的な競争力を持つプロジェクトを生み出せる環境が整いつつあります。 ■課題と可能性 もちろん課題も存在します: 資金調達の難しさ:国内市場はまだ規模が小さく、海外投資家からの資金依存が強い。 技術成熟度の差:新技術ゆえにトラブルやリスク管理が重要。 法規制の整備不足:ブロックチェーンや暗号資産に関する法制度が発展途上で不確定要素が多い。 それでも、若手人材の柔軟な思考とグローバルな視点は、これら課題を乗り越える大きな可能性を秘めています。個人的には、特に海外市場との接点を持てるプロジェクトは、ベトナムの若手が持つポテンシャルを最大限に発揮できる分野だと考えます。 ■まとめ ベトナムの若手ブロックチェーン人材は、技術力だけでなく起業精神や柔軟性により、国内外で存在感を増しています。社会的背景や市場環境が追い風となり、今後も新しいサービスやビジネスモデルを次々と生み出すでしょう。私自身も、こうした若手の挑戦から学び、ベトナム市場における可能性をさらに探っていきたいと感じています。
- 2025.08.29
【ベトナム】外国人労働許可の新ルールと変更点
近年、ベトナムで働く外国人にとって、労働許可制度の変更は大きな関心事です。2025年から施行された新制度は、従来の仕組みと比べて手続きや条件が簡略化され、駐在員や現場で働く外国人の負担軽減を目指しています。この記事では、新旧制度の違いや現地で働く方への影響について、できるだけわかりやすく解説します。 ■ 外国人労働許可とは? ベトナムで働く外国人には、基本的に「労働許可証」が必要です。従来は、雇用先の企業が申請を代行し、年齢、職歴、学歴などの条件が厳密にチェックされるため、手続きが煩雑で時間もかかっていました。 新制度では、これらの条件が緩和され、特に短期駐在や現場作業の外国人でも申請がしやすくなりました。私自身も現地で働く駐在員と接する中で、書類の負担軽減は日常業務の効率向上につながると感じています。 ■ 新制度での主な変更点 (1)申請条件の緩和 従来は大学卒以上が基本条件でしたが、新制度では職種によっては実務経験があれば許可が得やすくなっています。 (2)許可証の有効期限 従来は1年単位更新が一般的でしたが、新制度では職種や契約期間に応じて最長2年まで延長可能になりました。 (3)オンライン申請の導入 書類提出や申請の一部がオンラインで可能になり、役所へ何度も足を運ぶ必要が減少しました。 (4)健康診断や犯罪歴証明の簡素化 提出書類が簡略化され、現地での手間やコストが抑えられます。 ■ 現場で働く外国人への影響 特に若手駐在員や現場作業員にとって、新制度は負担軽減だけでなく、働き方の柔軟性も広げる意味があります。これまで「書類手続きのために入国や就業が遅れる」ことがありましたが、新制度では短期契約や緊急の人材配置もスムーズになる可能性があります。 私の経験からも、こうした改善は企業側だけでなく、働く本人のモチベーションや生活の安定にも直結する重要なポイントです。 ■ 注意すべきポイント 制度が変わったとはいえ、以下の点には注意が必要です: ・企業が正しく申請を行う必要がある ・職種や契約内容によって条件が異なる ・健康診断や犯罪歴証明は依然として必要 新制度だからといって全て自動的に許可されるわけではないため、事前に確認することが大切です。 ■ まとめ ベトナムの外国人労働許可制度の改正は、働く外国人や企業にとって大きな追い風です。手続きが簡略化され、短期・現場勤務者も許可を得やすくなったことは、現地で働く私自身も歓迎したい変化です。一方で、条件の確認や企業との連携は引き続き重要であり、法律改正を正しく理解することが、安全かつ円滑な現地生活の鍵となります。
- 2025.08.22
ベトナム人青年が命を救った感動の瞬間:三重県で2人の子どもを救助
2025年8月11日、三重県津市の海岸で、2人の日本人の子どもが高波にさらわれるという緊急事態が発生しました。そのとき、偶然その場に居合わせた2人のベトナム人青年—トン・マイン・トアンさんとファム・クオック・ダットさん—が、迷うことなく海へ飛び込み、命がけで子どもたちを救助しました。 🌊命がけの救助劇 その日、2人は海辺での休日を終え、帰ろうとしていたところ、助けを求める悲鳴を耳にしました。波は荒れ、風も強く、子どもたちはすでに岸から約100メートルも離れていました。状況は非常に危険でしたが、2人は即座に行動を起こし、命をかけて海へ飛び込みました。 「子どもたちの泣き声を聞いた瞬間、何も考えずに助けなければと思いました」とダットさんは語ります。 「波が強くて、途中で諦めそうになったけど、泳ぎの経験と周囲の応援が力になりました」とトアンさんも振り返ります。 🏅感謝と称賛の声 この勇敢な行動はすぐに地元の消防署や市民の間で話題となり、8月22日には津市消防署で表彰式が行われました。式には在日ベトナム大使のファム・クアン・ヒエウ氏も出席し、2人に感謝状を授与しました。 津市消防署長の井野拓海氏は「あなた方の勇気ある行動が2つの命を救い、家族に幸せをもたらしました。日本とベトナムの架け橋となる素晴らしい存在です」と称賛。 また、現場に駆けつけた消防隊長の勝田貴則氏も「彼らの迅速な判断と行動が悲劇を防いだ」と感謝の言葉を述べました。 🤝国境を越えた人間愛 この出来事は、単なる救助劇ではありません。それは、国籍や言語を超えた「人間としての優しさと勇気」を象徴する瞬間でした。2人の行動は、日本とベトナムの友好関係をさらに深めるきっかけとなり、多くの人々の心を打ちました。 「彼らの行動は、在日ベトナム人コミュニティの誇りであり、両国の絆を強めるものです」と大使は語りました。 このような感動的なエピソードは、日常の中にある「ヒーロー」を思い出させてくれます。 NHKニュースはこちらです。
- 2025.08.15
急増する中食ニーズに応える!ベトナムのコンビニ最前線とライフスタイルの変化
近年、急速な経済成長と都市化が進むベトナム。その変化の中で、今ひときわ存在感を増しているのが「コンビニエンスストア(CVS)」です。都市部を中心に大手チェーンの出店が加速し、ベトナム人のライフスタイルを大きく変えつつあります。この記事では、ベトナムのコンビニ市場が今なぜ注目されているのか、その背景や将来性、中食(なかしょく)文化との関係性について考察します。 ■ ベトナムにおける“コンビニ”とは? 日本でおなじみのコンビニが、今ベトナムでも急速に広まりつつあります。代表的なブランドには以下のようなものがあります: Circle K:国内最大規模の展開数を誇り、都市部を中心に24時間営業。 FamilyMart:日本資本を背景に、弁当やおにぎりなど和食系商品が人気。 WinMart+(旧VinMart+):ベトナム国内ブランドで、ローカル色を活かした商品展開。 Mini Stop:イオン系列で、日系クオリティを活かした商品ラインナップが特徴。 これらの店舗は単なる「日用品を買う場所」ではなく、現代都市生活における“食のインフラ”として存在感を強めています。 ■ 中食需要の増加と都市化の影響 コンビニが支持される最大の理由の一つに、「中食需要(外で調理された食品を家庭で食べること)」の急増があります。 以下のような社会的要因が背景にあります: ・共働き世帯の増加:食事を家庭で一から作る時間が減少。 ・単身・核家族化の進行:簡便で1人分の食事が好まれる傾向。 ・都市生活者のタイムパフォーマンス重視:外食よりも「家で手軽に」食べたいというニーズ。 特にホーチミンやハノイなどの都市部では、コンビニの弁当・総菜コーナーに夕方以降長蛇の列ができる光景も珍しくなくなりました。 ■ コンビニ業界の課題と可能性 急拡大を続けるベトナムのコンビニ市場ですが、当然ながら課題も存在します。 ・利益率の低さ:高額な賃料や人件費に対して、単価の安い商品が多いため採算が難しい。 ・物流・冷蔵インフラの未発達:温度管理や時間通りの納品が困難な地域も。 ・習慣の違い:ベトナム人にとっては「市場(Cho)」や露店での買い物が主流であり、コンビニの価格に割高感を感じる層も多い。 それでも、今後の中間層の拡大や若年層の生活スタイルの変化、デジタル決済の普及などが追い風となり、さらなる市場成長が期待されています。 ■ 外国人居住者にとってのコンビニ活用法 日本人を含む外国人居住者にとっても、ベトナムのコンビニは非常に心強い存在です。 ・24時間営業の安心感 ・英語表記の商品やスタッフ対応 ・スマホ決済やクレカ決済への対応 ・日本食・輸入食品の取り扱いがある店舗も増加 特に、初めてベトナムに住む方にとっては、コンビニの存在が生活の「入り口」として非常に便利です。 ■ まとめ ベトナムにおけるコンビニの普及は、都市化やライフスタイルの変化に応じた必然の流れと言えます。「中食文化」の定着とともに、コンビニは今や“食の選択肢”だけでなく、“生活基盤”そのものへと進化を遂げつつあります。 生活者としての視点だけでなく、ビジネスの観点でも注目すべきトピックの一つ。ベトナムに住む/働く日本人にとっても、日常の中でその変化を感じ取ることは、現地理解を深める大きなヒントになるはずです。
- 2025.08.08
なぜホーチミン市は世界で2番目に「外国人居住者を引き留める」都市と評価されるのか
ジョーク・オッター・ファン・ズイレンさん、2025年8月、ホーチミン市トゥードゥック区の食堂にて。写真は本人提供 ⼈都市調査「City Pulse 2025:The Magnetic City」では、ホーチミン市は外国人居住者を引き留める力で世界第2位にランクされ、61%以上の外国人が「離れるつもりはない」と答えました。対象は全世界65都市の3.3万人で、市選びの理由や都市デザインを探る調査です。 1996年、ジョーク・オッター・ファン・ズイレンさんは、ご主人とともにオランダからホーチミン市に移住し、当初は3年間の滞在を予定していましたが、30年が経った今でも「この街から離れられない」と語ります。 ご夫妻はイギリスとポーランドのノバルティス社でそれぞれ3年以上勤めた後、世界各地を巡るノマドライフを想定していました。しかし、ホーチミン市はその計画を一変させたのです。 二か月足らずでホーチミン市に魅了され、「国際色豊かな小さな村」のように感じるタオディエン地区では、夕食を求めてバイクで出かけたり、屋台やカフェ、格式あるレストランへ気軽に行ったりと、予約や計画なしで生活が楽しめます。温暖で明るい気候に開放的な雰囲気も魅力です。 ご主人が仕事に出かけている間、オッターさんは観光やゴルフ、テニス、女性クラブやボランティア活動に精を出し、毎週2回孤児施設を訪れて活動しています。 「住み心地が良く、手頃な物価、親切な人々が魅力です。」とオッターさんは語ります。「夫婦とも、ホーチミン市が“チャンスの街”だと感じました。」 2006年には、100%外国資本の幼稚園を開園し、この街での生活を本格的に築きました。 オッター夫妻は子供がおらず、オランダにいた親もすでに他界しており、ホーチミン市を“故郷”と見なし、歴史や文化を学ぶなどして「完璧にベトナム人化」したといいます。ベンタイン市場の露店商や清掃員など、道で出会う誰とも心から交流し、「みんな親切だから、誰にでも敬意を払っている」と語りました。 現在68歳になる夫のギーガーさんとともに、国外へ移住することは考えておらず、彼らの願いは高齢者が安心して過ごせる医療や移動支援が整ったリタイア生活施設がベトナムにも整備されるとのことです。 オッター夫妻のように、ホーチミン市には20万人以上の外国人が定住しており、ハノイの3倍以上の数です。2023年7月時点で、ホーチミン市労働傷病兵社会局によれば、約2.7万人の外国人が就労許可を得ており、9,200以上の組織や企業で働いています。 「プロフェッショナルなビジネス環境、リーズナブルな生活費、モダンなライフスタイル」がその要因で、戦略的な東南アジアの地理、中流階級の台頭、高品質な労働力を低コストで提供する技術・製造業・物流などの分野が魅力的だとMove to Asia社長のギョーム・ロンデンさんは分析します。 シンガポール、上海、クアラルンプールといった都市と比べても、ホーチミン市の住宅・飲食・医療サービスのコストは低く、品質は高いといいます。 「若くやる気にあふれ、革新的で、伝統と現代が交錯する都市」—この街ならではのバランスであると彼は語り、「ベトナムにはこういった都市が他には少ない」と評価します。 MoveToAsiaのデータによると、ベトナムで長期または永住を意図してくる外国人は55〜60%で、会社設立や一時滞在ビザ取得、投資目的が多く、その他は短期商談・市場調査ですが、長期滞在者はその後も多くいます。ベトナムで2年以上滞在している人のうち、80%以上がホーチミン市に定住を決めています。これは単なる個人の好みでなく、仕事の機会やサービス、国際的なつながりの容易さが背景にあります。 人々はこの街のエネルギー、柔軟さ、「やればできる」という起業精神に高い評価をしています。ビジネスの観点では、「コスト、可能性、生活の質」のバランスが絶妙だと語ります。 出典:ホーチミン市が「外国人居住者の定着率」で世界第2位にランクインした理由 — VnExpressライフスタイル記事より
- 2025.08.01
ベトナムのフードデリバリー競争が映す“生活インフラ”の新常識とは?最新動向を徹底解説◎
近年、急速に都市化とデジタル化が進むベトナム。そのなかでも注目を集めているのが、日常生活に深く浸透しつつある「フードデリバリー」サービスです。GrabFoodやShopeeFoodなどをはじめ、多数の事業者がこの市場に参入し、都市部を中心に激しい競争が繰り広げられています。本記事では、ベトナムのフードデリバリー業界の現状や背景、そしてその裏側にある社会変化について解説します。 ■ ベトナムのデリバリー市場:日常の「当たり前」に変化 かつては電話注文や店頭での持ち帰りが主流だった食事の購入スタイルも、コロナ禍を契機に大きく転換しました。今では都市部に住む若年層を中心に、「アプリで注文して家で受け取る」スタイルが定着しつつあります。 代表的なプラットフォームには以下のようなものがあります: GrabFood:東南アジア最大の配車・デリバリーアプリGrabが提供。ベトナム全土で利用可能。 ShopeeFood:EC大手Shopeeが運営。プロモーションや割引施策が豊富。 Baemin:韓国発のアプリで、都市部を中心に勢力拡大中。 Loship:地場系スタートアップによる挑戦者。ユニークな提携や配達戦略で差別化を図る。 いずれのアプリも、決済から配送ステータス確認まで一括して完了でき、非常に利便性が高いのが特徴です。 ■ 拡大する市場の裏にある社会背景 フードデリバリーがここまで浸透した背景には、以下のような要因が挙げられます: 都市部の交通渋滞と暑さ:外出のストレスが高く、デリバリーの需要が高まる。 若年層のスマホ依存・ITリテラシー向上:アプリ操作に抵抗が少なく、気軽に利用。 共働き世帯の増加:調理の手間を省くためのニーズ。 大量のプロモーションやキャンペーン:割引やクーポンで初回利用のハードルが低い。 こうした環境のもと、デリバリーアプリは単なる「食のサービス」ではなく、“生活インフラ”の一部へと進化しています。 ■ 利便性の裏にある課題とリスク 便利さと引き換えに、いくつかの課題も見えてきます。 ・労働環境の不安定さ:配達員の報酬体系や保障の不透明さが社会問題化。 ・プラットフォーム依存:飲食店が一部アプリへの依存度を高めすぎるリスク。 ・価格競争の激化:プロモーション合戦により、利益率が下がる傾向。 また、すべての消費行動がアプリと結びつくことで、個人情報の収集や行動履歴の蓄積といったプライバシー面の懸念も高まっています。 ■ 外国人にとってのフードデリバリー利用の利点と注意点 日本人を含む外国人にとっても、ベトナムのデリバリー文化は非常に便利です。言語の壁を感じにくいアプリ設計や、クレジットカード・モバイル決済の普及により、現地生活のストレスを大きく軽減してくれます。 ただし、以下のような点には注意が必要です: ・アプリによっては外国人登録が難しい場合あり ・プロモーションはベトナム語限定のことが多い ・デリバリー住所の登録ミスに注意(特に集合住宅) ■ まとめ ベトナムのフードデリバリー業界は、単なる「飲食のデジタル化」にとどまらず、都市生活のスタイルそのものを変える存在となっています。利便性の追求と競争の激化がもたらす影響を正しく理解し、賢く活用することで、ベトナムでの生活はより快適で豊かなものになるでしょう。 ベトナムで暮らす・働く皆さまにとって、こうしたトレンドを知ることは、日常生活を円滑にする大きなヒントになるかもしれません。
- 2025.07.25
TP.HCM、排気ガス対策に向けてガソリン車の制限を本格化!
ホーチミン市では、環境保護と持続可能な都市づくりに向けて、本格的な「排気ガスゼロ都市」への転換が始まりました。特に注目されているのが、ガソリン車の段階的な制限と、公共交通の電動化です。 2025年から、市内を走るバスの完全電動化に向けた計画がスタートします。現在、すでに約31%のバスが電気やCNG(圧縮天然ガス)などグリーンエネルギーを使用しており、2030年までには全てのバスを電動または環境対応型の車両へ移行させる予定です。これにより、市中心部や観光地として知られるコンダオなどのエリアでは、化石燃料車の乗り入れが大幅に制限されることが期待されています。 また、配送やライドシェアなどで使われるバイクに対しても対策が強化されます。ホーチミン市では、約40万台のガソリンバイクが毎日稼働しており、平均で1日80~120kmもの距離を走行していることから、環境負荷が高いとされています。これに対応すべく、2026年からは電動バイクへの転換支援政策が導入され、2029年までにすべてのバイクを電動化する方針が示されています。 転換を支援する施策としては、電動バイク購入時の低利融資や税金・登録手数料の免除、さらには中古ガソリン車の回収・再利用制度などが検討されています。充電ステーションの整備についても、市と民間企業が協力しながら進められており、インフラ面でも着実な準備が進行中です。 このような取り組みは、単なる交通手段の変革にとどまらず、ホーチミン市全体を「グリーン交通都市」へと変えていく壮大なプロジェクトの一部です。市長と大手企業Vingroupの連携により、車両・インフラの両面から持続可能な都市を実現する挑戦が本格化しています。 🚀 ホンダ・ベトナム、7月14日より電動バイク「CUV e:」のレンタルを開始!月額わずか147万ドンで提供 それに合わせる形で、ベトナムでのガソリンバイクの市場で80%以上のシェアを誇るホンダは、電動バイクのレンタルを開始しました。2025年7月14日より、ホンダ・ベトナムは高級電動バイク「CUV e:」のレンタルサービスをハノイ、ホーチミン、ダナンの19店舗で開始しました。購入ではなくレンタルという形式は、ホンダの電動バイクとしてはベトナム市場初の試みです。 レンタル料金は月額1,472,727ドン(税込)で、契約期間は3か月または6か月から選べます。6か月契約の場合、総費用は約880万ドンになりますが、契約延長時には3か月レンタルで1か月無料、6か月なら3か月無料の特典が付きます。レンタルには車両1台、充電池2個、充電器2台が含まれています。 CUV e:の特徴として、このバイクは都市型電動バイクで、7インチのTFTディスプレイを搭載し、Bluetoothを通じてスマートフォンと接続可能です。ナビゲーションや音楽操作、通知表示が行える他、USB-Cポート付きの収納スペースやLEDライト、スマートキーなど快適装備を多数備えています。最高速度は約80km/h、満充電での航続距離は70〜80kmです。 電池とサポート体制も充実しており、電池は家庭で充電可能な取り外し式で、ホンダの販売店では無料の電池交換も実施しています。また、24時間対応のロードサービスや各種保険もレンタルパッケージに含まれており、安心して利用できます。 市場への影響と展望として、電動バイクをレンタル形式で提供することで、高価格な購入負担を避け、より多くの消費者に電動モビリティへの移行を促す狙いがあります。都市部でのガソリン車規制が進む中で、今回のホンダの一手はベトナムの「グリーン交通」への転換に寄与する大きな一歩といえるでしょう。 ■まとめ 電動バイクと電動自動車を製造販売しているVinFastにとって、これは大きな追い風となることは間違いありません。国民の間では、政治の力で政府が動かされているのではないかと憶測されています。経済発展やパラダイムシフトを達成するためには、こうした政治的な力が必要だと理解できるものの、突然の電動化は、多くのガソリンバイクが廃棄される結果となり、バイク関係の製造業だけでなくサービス業にも影響を及ぼします。廉価な古いバイクで生計を立てているような労働者には、何らかの支援がなければ、社会的弱者立場の人々が非常に苦しい状況に追い込まれるのは間違いありません。富裕層や外国人住民には環境が改善されるというメリットがある一方で、発電量が不足しているベトナムにおいて、急激な電動化は電力供給不足に陥る可能性もあります。ガソリンバイクからの移行には時間が限られており、政府がどれほど議論し、国民に迷惑をかけない形で成功を収められるかが注目されています。
- 2025.07.18
GreenSMとVINFASTが切り開く、ベトナム発EV革命と巨大インフラ開発の現在地
近年、ベトナムの都市交通やインフラ分野において、革新的な動きが加速しています。中でも注目されているのが、電動タクシー事業「GreenSM(グリーン・エスエム)」と電気自動車メーカー「VINFAST(ヴィンファスト)」の急成長です。この記事では、これらの企業がベトナム国内外でどのような影響を及ぼしているのかをわかりやすくご紹介します。 ■GreenSMとは? GreenSMは、ベトナム最大財閥・ビングループが展開する電動タクシーサービスで、設立からわずか数年で配車アプリ市場に革命をもたらしました。これまで業界トップだったGrabを抜き、現在ではベトナム国内でのシェア1位に。さらにラオスやインドネシア、フィリピンなどのASEAN諸国にも進出しています。 この成長の背景には、低コストかつ環境に優しいEV(電気自動車)の活用があり、都市部のモビリティを大きく変えつつあります。 ■VINFASTの役割 GreenSMの車両の多くは、同じビングループ傘下のVINFAST製。EV市場におけるVINFASTの存在感は年々高まり、国内調達率80%を目指した取り組みも進行中です。ベトナム政府と連携し、工業団地への支援策やサプライヤー向けの優遇制度など、産業全体への波及効果も大きな注目を集めています。 ■巨大インフラ計画との関わり もうひとつの注目トピックが、ベトナム全土をつなぐ南北高速鉄道の計画です。総事業費は約10兆円とされ、この国家プロジェクトにはVINFASTやThacoといった民間大手企業も参加を表明。企業が主体的にインフラ開発に関与する動きが強まっており、日系企業との連携の可能性も広がっています。 ■まとめ GreenSMとVINFASTの成長は、ベトナムの産業構造や社会インフラの在り方を大きく変えようとしています。こうしたダイナミックな動きを背景に、日系企業での経験を活かし、地元大手企業と橋渡し役を果たすベトナム人人材の活躍も今後ますます期待されます。
- 2025.07.11
「ベトナムあるあるニュース」歩道は誰のものなのか?
ハノイの歩道で起きた小さな争いが、大きな議論に発展しました。 先日、ハノイ市のミーディンバスターミナル前で起きたある出来事が、SNSで広まり、多くの人々の関心を集めました。きっかけは、歩道でバスを待っていた若い女性と、そこで商売をしていた53歳の露店商人とのやり取りでした。 露店の女性は「ここは自分の商売の場所だ」と主張し、若い女性にその場を離れるよう求めました。しかし女性がそれに応じなかったため、露店商人は腹を立て、女性のキャリーケースを蹴るという行動に出てしまいました。 この様子は通行人によって撮影され、SNS上に投稿されるとすぐに拡散されました。警察も状況を把握し、調査に乗り出しました。その結果、露店商人が警察の巡回が少ない時間帯を狙い、許可なく歩道で営業していたことが確認され、公共の場所を私的に占有した行為と見なされました。最終的に250万ドンの罰金が科されたとのことです。 このニュースに対して、SNSでは「歩道は市民全員のものであり、個人の商売の場所ではない」「公共の場でのふるまいにはもっと思いやりが必要だ」といった厳しい声が多く見られました。露店商人にも生活の事情があるのかもしれませんが、今回の出来事は、公共スペースの使い方や他者への配慮について、改めて考えさせられるきっかけとなりました。 しかしながら、事情には裏があり、少しわかりにくい要素があります。法律に従うと、公共の道路やスペースは一般市民のものであり、そこで商売をすることは許されていません。しかし、バイクや自転車の駐輪、また車の路上駐車などは現実には誰かが管理し、商売にしています。私もよく車を利用して路上に駐車しています。こうした行為を取り締まる行政の担当部署がありますが、取り締まりを回避するために、商売をしている人たちは管理している役人にお金を支払うことが一般的で、これがベトナム社会の仕組みでもあります。こうして、一部の役人は路上で商売をしている人たちから収入を得て額面の安いお給料でも生活できるようになります。商売をしている人たちはそれでも多少のお金を得て生活を維持しています。 これは広い意味でアンダーグラウンド経済であり、社会的な救済の仕組みとも言えるかもしれません。 実は、これまでも何度か行政側で路上商売やその権利を明確化するために入札を開く動きがありました。しかし、その権利を明確化すると、国庫にはお金が入るものの、末端の行政の役人には何も利益がなく、かえって資本力のある会社が路上使用権を買ってしまうと、上記のように社会的な救済措置が機能しなくなるのです。その結果、失業者が増え、コストが高くなるといったデメリットが明らかになっています。おそらく、こうした理由から、その計画は案として存在しているものの、実際には全く施行されていないのが現状です。 先進国のように税収が増加し、必要に応じて社会福祉インフラにその資金が流れる世界もあれば、政府を介さずに国民や個人の間でお金が流通する世界もあります。現在が、ベトナムにとって一つの理想的な状態かもしれません。