- ベトナム国内経済 注目トピック
- 2025.09.26
近年、経済成長と都市化が加速するベトナム。その中心都市ハノイでは、深刻化する交通渋滞と大気汚染を背景に、「ガソリンバイクの市内乗り入れ禁止」が議論されています。バイクは国民生活に欠かせない存在であるだけに、この政策は市民の関心と不安を大きく集めています。この記事では、規制の背景や市民の声、そして外国人居住者を含む生活者への影響について考察します。
■ ベトナムにおける“バイク文化”
ベトナムといえば“バイク大国”。特にハノイやホーチミンでは、通勤、買い物、子どもの送り迎えなど、日常のあらゆる場面でバイクが使われています。利便性は高い一方で、交通渋滞や排気ガスによる大気汚染は年々深刻化。私自身、現地を訪れた際に、道路を埋め尽くすバイクの波に圧倒されつつも、これが市民にとって「生活の足」なのだと強く感じました。
■ 規制強化の背景と目的
ハノイ市がバイク規制に踏み切る背景には以下の要因があります。
・慢性的な交通渋滞の緩
・PM2.5を含む大気汚染対策
・公共交通機関(BRT・メトロ)の利用促進
・国のカーボンニュートラル目標への貢献
都市の持続的な発展を見据えた施策ですが、生活の中心にあるバイクを制限することは、市民にとって大きな負担にもなります。
■ 市民の声と懸念
規制をめぐっては賛否が分かれています。
「通勤に欠かせない。代替手段がなければ困る」
「電動バイクは高すぎて手が届かない」
「環境対策は理解できるが、準備期間が短すぎる」
特に低所得層ほど影響が大きく、移動の自由や生活コストの上昇が懸念されています。外から見ると「環境のために仕方ない」と思いがちですが、日常生活に直結する問題だけに、現地では切実さが伝わってきます。
■ 今後の課題と展望
規制を円滑に進めるためには、以下のような対応が求められるでしょう。
・公共交通網の拡充と料金の適正化
・電動バイクの普及支援と充電インフラ整備
・移行期間を設けた段階的な規制
・市民への十分な説明と合意形成
個人的には「一律禁止」よりも「段階的な移行」と「選択肢の提示」が不可欠だと思います。単に制限を課すだけでは、市民の反発を招き政策の実効性が損なわれる可能性があります。
■ 外国人居住者への影響
ベトナムに住む外国人にとっても、この変化は無関係ではありません。これまで一般的だったレンタルバイクやGrabバイク利用に制限がかかれば、公共交通やカーシェアへの依存度が高まります。私自身も出張時にバイクタクシーを多用してきただけに、今後の規制が生活者の選択肢をどう変えるのか、注目しています。
■ まとめ
ハノイ市のバイク規制は、環境改善と都市交通の持続可能性を目指す大きな挑戦です。その一方で、市民生活への影響は大きく、社会的合意形成と実効的な代替策が欠かせません。都市化と環境問題のはざまで揺れるベトナム。この政策の行方は、市民や外国人居住者のライフスタイルを左右するだけでなく、アジアの他都市にとっても参考となる事例になるかもしれません。