- 2025.08.01
近年、急速に都市化とデジタル化が進むベトナム。そのなかでも注目を集めているのが、日常生活に深く浸透しつつある「フードデリバリー」サービスです。GrabFoodやShopeeFoodなどをはじめ、多数の事業者がこの市場に参入し、都市部を中心に激しい競争が繰り広げられています。本記事では、ベトナムのフードデリバリー業界の現状や背景、そしてその裏側にある社会変化について解説します。
■ ベトナムのデリバリー市場:日常の「当たり前」に変化
かつては電話注文や店頭での持ち帰りが主流だった食事の購入スタイルも、コロナ禍を契機に大きく転換しました。今では都市部に住む若年層を中心に、「アプリで注文して家で受け取る」スタイルが定着しつつあります。
代表的なプラットフォームには以下のようなものがあります:
GrabFood:東南アジア最大の配車・デリバリーアプリGrabが提供。ベトナム全土で利用可能。
ShopeeFood:EC大手Shopeeが運営。プロモーションや割引施策が豊富。
Baemin:韓国発のアプリで、都市部を中心に勢力拡大中。
Loship:地場系スタートアップによる挑戦者。ユニークな提携や配達戦略で差別化を図る。
いずれのアプリも、決済から配送ステータス確認まで一括して完了でき、非常に利便性が高いのが特徴です。
■ 拡大する市場の裏にある社会背景
フードデリバリーがここまで浸透した背景には、以下のような要因が挙げられます:
都市部の交通渋滞と暑さ:外出のストレスが高く、デリバリーの需要が高まる。
若年層のスマホ依存・ITリテラシー向上:アプリ操作に抵抗が少なく、気軽に利用。
共働き世帯の増加:調理の手間を省くためのニーズ。
大量のプロモーションやキャンペーン:割引やクーポンで初回利用のハードルが低い。
こうした環境のもと、デリバリーアプリは単なる「食のサービス」ではなく、“生活インフラ”の一部へと進化しています。
■ 利便性の裏にある課題とリスク
便利さと引き換えに、いくつかの課題も見えてきます。
・労働環境の不安定さ:配達員の報酬体系や保障の不透明さが社会問題化。
・プラットフォーム依存:飲食店が一部アプリへの依存度を高めすぎるリスク。
・価格競争の激化:プロモーション合戦により、利益率が下がる傾向。
また、すべての消費行動がアプリと結びつくことで、個人情報の収集や行動履歴の蓄積といったプライバシー面の懸念も高まっています。
■ 外国人にとってのフードデリバリー利用の利点と注意点
日本人を含む外国人にとっても、ベトナムのデリバリー文化は非常に便利です。言語の壁を感じにくいアプリ設計や、クレジットカード・モバイル決済の普及により、現地生活のストレスを大きく軽減してくれます。
ただし、以下のような点には注意が必要です:
・アプリによっては外国人登録が難しい場合あり
・プロモーションはベトナム語限定のことが多い
・デリバリー住所の登録ミスに注意(特に集合住宅)
■ まとめ
ベトナムのフードデリバリー業界は、単なる「飲食のデジタル化」にとどまらず、都市生活のスタイルそのものを変える存在となっています。利便性の追求と競争の激化がもたらす影響を正しく理解し、賢く活用することで、ベトナムでの生活はより快適で豊かなものになるでしょう。
ベトナムで暮らす・働く皆さまにとって、こうしたトレンドを知ることは、日常生活を円滑にする大きなヒントになるかもしれません。