ベトナム労務情報

2025.09.06

ベトナムの外国人労働者制度が大きく変わる!政令219号とは?

ベトナムの外国人労働者制度が大きく変わる!政令219号とは?
ベトナム労務情報

2025年8月、ベトナム政府は外国人労働者の管理制度を大きく見直す政令219号を施行します。これは、これまで使われてきた政令152号と70号を統合・更新するもので、企業にとっても外国人労働者本人にとっても影響の大きい制度改革です。 一見すると法律改正のように見えますが、実際にはベトナムがグローバル人材を本格的に受け入れる姿勢を打ち出す、大きな転換点と言える内容です。本記事では、なぜこの改革が必要だったのか、そして企業として何をすべきかをわかりやすく解説します。 何が問題だったのか?改革の背景 これまでの制度では、外国人労働者の職種定義が不明確で、地方によって解釈が分かれることがよくありました。その結果、企業ごと・地域ごとに手続きが煩雑かつ非効率になっており、外資系企業にとっては頭痛の種でした。 さらに、政令70号によってベトナム人労働者の優先採用が義務付けられ、外国人を雇用する前に求人広告の掲載が必要になったことで、実務上のハードルが一層高くなっていたのです。 こうした背景を受けて生まれたのが、今回の政令219号です。煩雑な制度の簡素化と透明性の向上が最大の目的となっています。 政令219号の主な変更点とは? 職種の定義がより明確に 「管理職」「専門家」「技術者」といった職種が、より明確に定義されました。これにより、誰がどのカテゴリーに該当するのかが判断しやすくなります。たとえば、これまで3年以上の経験が求められていた専門家職は、優先分野であれば1〜2年で許可対象になるなど、柔軟性が高まりました。 労働許可証の発行窓口が一本化 これまで地域ごとにバラバラだった労働許可証の発行窓口が、省レベルの人民委員会に集約されます。地域間で手続きに差があった問題が緩和され、よりスムーズな申請が可能になります。 電子化で手続きが簡単に これまで紙で行っていた手続きは、今後はオンラインで完結するようになります。労働許可証と犯罪経歴証明書の申請も同時に電子で行え、結果もオンラインで受け取れます。これは企業にとって大きな負担軽減となるでしょう。 有効期間と更新回数のルールが変更 労働許可証の有効期間は最大2年、そして更新は1回限りと明確に定められました。これにより、企業は長期的な人材計画を立てる必要があり、人材戦略がより重要になります。 複数の地域で勤務できる柔軟性 これまでは勤務エリアが限定されていましたが、政令219号の施行後は、同じ企業内であれば複数の省や都市での勤務が可能になります。ただし、勤務する地域の政府に事前通知する必要があります。 労働許可が不要になるケースの拡大 特定の分野、たとえば金融、科学技術、デジタル分野などで働く外国人に対しては、労働許可証が免除される可能性があります。これはベトナムが高度人材の誘致に本腰を入れている証拠とも言えるでしょう。 企業は今、何を準備すべきか? 政令219号の施行を前に、企業が対応すべきことは多くあります。 まず、現在雇用している外国人スタッフの職種や経験年数が新制度に適合しているかを確認すること。そして、労働許可証の更新ルールが変更されるため、更新スケジュールの見直しも必要です。 また、オンライン申請に対応するために、社内の申請フローの整備やマニュアル化も欠かせません。さらに、許可が不要となるケースでも「事前通知」が義務化されるため、誤って違反とならないよう注意が必要です。 まとめ:人事部門に求められるのは「戦略と法令遵守」 政令219号は、外国人労働者の受け入れをさらに広げる一方で、企業に対してはより高いレベルの戦略性とコンプライアンス対応を求めています。 この法改正を単なる「ルール変更」と捉えるのではなく、グローバル人材の活用を競争力強化のチャンスと位置づけ、柔軟かつ前向きに対応することが求められます。

2024.07.08

最新情報!急成長するベトナムの物価・賃金の上昇について徹底解説

最新情報!急成長するベトナムの物価・賃金の上昇について徹底解説
ベトナム労務情報、ベトナム生活情報

ベトナムでも近年、経済成長が著しく、多くの外国企業が進出するなどして急速に発展しており、同時に物価や賃金の上昇がみられるようになりました。 ベトナムでの生活や仕事を考える際には、現地でのこれらの変化を理解することが重要です。 そこで、今回は「ベトナムの物価上昇率の現状」「ベトナムの昇給率や収入事情」「ベトナムの金利」などを分かりやすく解説していきます!   ベトナムにおける物価上昇率は全体として増加傾向にあると見られます。 2024年の第1四半期は、「教育部門」が10.12%で最も上昇し、サービス部門の中では特に、「公証人手数料・保険およびその他のサービス」が12.59%と増加しています。 また「医薬品および医療」は6.48% 増加し、「食品および外食部門」は 4.05% 増加しています。 これら他にも「住宅・建設資材」「輸送」「飲料およびタバコ」「文化・娯楽・観光」などの部門でも1~6%程度上昇しており、2024年第1四半期の消費者物価指数は2023年の同時期と比べて3.77%上昇しました。 在住していて、それほど大きな値上がりは感じませんが、地元紙では食品の値上がり等が報じられ「物価が上がっている」と言えます。 消費者物価指数(CPI)とは ある時点を100とした比較時の費用を計算し、比率の形(指数)で表したものです。 一般的に物価が上昇しているということは景気が良く、消費者の購買意欲(需要)が高くなっているとされます。   ベトナム政府の見解では「ロシアとウクライナの軍事衝突」や「中東での政治不安」や「世界的なインフレ」を理由としています。 これに対しベトナム政府と首相は、成長の促進及びマクロ経済の安定を維持し、インフレの抑制、また経済の主要なバランスを確保するための多くの解決策を実施するよう、省庁に指示しました。 さらに、政府は「賃金改革と2024年7月からの地域最低賃金の引き上げは、家庭内で消費される商品やサービス価格の上昇につながる」とし、インフレ抑制政策により「消費者心理を安定させ、インフレ期待を安定させる」と発表しました。 参照:TỔNG CỤC THỐNG KÊ/2024 年第 1 四半期の市場価格と 2024 年の消費者物価指数に影響を与える要因の予測 インフレとは 普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が上がることです。インフレが良い循環で起きている場合は、商品やサービスの販売価格が上がったことにより企業の利潤が増え、働く社員の給与が上がる傾向にあります。   物価が上がった際、給与も上がらないと生活は厳しくなる一方ですよね。続いては昇給率を見ていきましょう。 ベトナム政府は2024年7月1日から適用される最低賃金を引き上げの規定を発行しました。 最低賃金の額は地域ごとに決められており、各地域の最低賃金は以下のようになりました。 地域 最低月給 (単位:VND/月) 最低時給 (単位:VND/月) 地域Ⅰ ハノイ市・ホーチミン市・ハイフォン市等 4.960.000 23.800 地域Ⅱ ダナン市・バクニン省等 4.410.000 21.200 地域Ⅲ ハナム省等 3.860.000 18.600 地域Ⅳ 地域Ⅰ~Ⅲ以外 3.450.000 16.600 これにより、最低賃金は地域差がありますが改定前より約6%上昇することになります。 日本円に換算すると 時給およそ104円~150円 月給およそ2,1737円~3,1251円 が最低賃金となります。(2024年7月4日現在レート) ベトナムの最低賃金は1年毎に見直しをされていましたが、近年はコロナウィルス等の影響により2021年と2023年は最低賃金の引き上げが行われず、今回の最低賃金引き上げは、2022年7月以来2年ぶりとなりました。 参考:BÁO ĐIỆN TỬ CHÍNH PHỦ/全文: 地域最低賃金を規制する政令 74/2024/ND-CP 国家賃金評議会とは 地域最低賃金の調整と発表について政府に助言するため2013 年 5 月 14 日付け政府の 2012 年労働法の規定に基づいて設立されました。 構成員は労働・戦傷病兵・社会省・労働総同盟の代表・中央雇用主代表組織の代表からなります。 (参照URL)  また、ベトナムの日系企業のベトナム人雇用者に対する昇給率は、会社によって様々ですが毎年5~7%程度だと言われています。 企業によっても異なると思いますが、日本より比較的に高い水準ではないでしょうか。   ベトナム政府総合統計局によると「2023 年の1人当たりの平均月収は 496 万VND(=31,496円) に達し、2022 年と比較して 6.2% 増加」しています。 2023 年の都市部の1人当たり月平均収入は 626万VND(=39,751円) に達し、地方417万VND(=26,480円)の 1.5 倍近くに達すると予想されています。 南東部が 1 人あたり月平均収入が最も高い地域で、月平均収入が最も低い地域は北部および山岳地帯と予想されています。 参照:TỔNG CỤC THỐNG KÊ/プレスリリース 2023年住宅生活基礎調査の結果について   では、実際にベトナムでの生活コストはどのくらいでしょうか? 世界各国の物価水準や交通費、医療水準、犯罪率、環境汚染などをデータベース化した情報サイト「ナムベオ(Numbeo)」によると ハノイ市での生活費は 4人家族の推定月額費用は、家賃を除いて  43,291,119.2VND(274,903円) 1人暮らしの推定月額費用は、家賃を除いて 12,393,813.2VND(78,702円) ホーチミン市での生活費は 4人家族の推定月額費用は、家賃を除いて  44,641,977.5VND(283,481円) 1人暮らしの推定月額費用は、家賃を除いて 12,674,445.2VND(80,484.1円) とされています。(2024年7月4日現在レート) 参考として、このサイトでの 日本の平均生活費は 4人家族の推定月額費用は、家賃を除いて  462,175円 1人暮らしの推定月額費用は、家賃を除いて 131,033円 となっています。 日本とベトナムの2国間での生活費比較のデータは、 ベトナムの生活費は日本より37.3%安い(家賃を除く) ベトナムの家賃を含む生活費は日本より36.1%安い ベトナムの家賃は日本より31.5%安い ベトナムのレストラン価格は日本より45.1%安い ベトナムの食料品価格は日本より37.1%安い となっており、ベトナムでの生活コストは日本に比べて家賃・生活費・食費などが3割程度安くなっているということがわかります。実際に、在住している実感として食費は日本にいたころよりも2~3割安くなっています。   先述したベトナム人の収入と必要な生活費を見て「生活費が意外と高く、平均収入では賄えないのでは?」と感じた方もいらっしゃるでしょう。 2022年の調査によると、都市部の平均月収は ハノイ市(北部) 月収:8,700,000ドン(約49,000円) 年収:113,100,000ドン(約640,000円) ホーチミン市(南部) 月収:9,100,000ドン(約51,000円) 年収:118,300,000ドン(約660,000円) ビンズオン省(南部) 月収:8,900,000ドン(約50,000円) 年収:115,700,000ドン(約650,000円) と都市部では「全国平均月収よりも高くなっている」ことがわかります。このことから、ベトナムの所得は地域によって大きく異なることがわかり、平均月収が必ずしも全国的に当てはまるものではないと言えそうです。また、 “総合統計局のグエン・ティ・フォン局長はトゥオイ・トレ氏との会談で、人口生活水準調査報告書における一人当たりの平均収入には、働いていない、仕事を持たない、またはまだ労働年齢に達していない世帯内の扶養家族も含まれていると述べた。サラリーマンの平均収入を分けるともっと高くなります。” (引用元URL) と、発表していることから、ベトナム人一人当たりの収入額は統計データよりも高くなる可能性があります。 実際に、都市部の日系企業など外資系企業に勤めているベトナム人の月収は日本の平均給与(およそ31万円)より高い人もおり、職種や住んでいる地域によって収入の差があると言えます。 また、ベトナムのネット銀行サービス「Timo」の生活費に関する記事によると 月収700 万~ 1,500 万VNDの会社員の生活費は、食費4.000.000 VND、住居費2.000.000 – 3.500.000 VND、習い事500.000VND、医療品250.000 VND、ガソリン代や服飾費などその他の費用1.750.000 – 3.250.000 VNDで ホーチミンに住むベトナム人会社員の生活費は少なくとも合計850万VND(およそ53000円)以上かかると示唆されています。   2024年5月ベトナム国立銀行(SBV)は、信用機関に対し、今年第2四半期末までにシステム全体の信用増加率5~6%目標を達成し、貸出金利を1~2%引き下げるよう要求したと発表しました※①。 貸出金利とは 貸出金利とは、金融機関(銀行等)が顧客に貸出しを行う場合の利子率のこと。 貸出金利が下がると個人消費や企業の設備投資が高まり、景気が上昇する傾向にある。 一方、コロナ禍の預金金利は下がる傾向にありましたが、2024年7月からは多くの銀行で引き上げられ、期間や銀行によっては 0.1 ~ 0.6% の増加となりました。 具体的にVietcombankの定期預金金利は最大で、60ヶ月4.70%(VND)となっています。また、12ヶ月では4.60%(VND)となっています。 (2024年7月4日現在) 預金金利とは 金融機関でお金を預けたときに、金融機関から上乗せされる金額(利息)の割合のこと。 長期金利が上昇する背景には「資金需要増加」「インフレ期待」「金融引締め」などがあります。 ベトナムの経済アナリストらは2024年7月に行われた「最低賃金の改訂」や「米ドル為替レート差」などの影響から「さらに預金金利の上昇傾向がますます明確になり、最近では上昇ペースが加速している」と評価しています※②。 金利は変動していますが、ベトナムの預金金利(利息)は日本の銀行と比較すると遥かに高く、ベトナムで働く人は、金利の恩恵を受けることも可能です。   ▼ベトナムの銀行利息について知りたい方はこちらもご覧ください 駐在員必見!賢く使えばお金持ち?驚愕のベトナム銀行金利 ベトナムは中央銀行と政府、国が定款資本の 50% 以上を所有する商業銀行などが一体となって経済政策を進めており、経済は安定しているとされる見方もあります。 一方で、世界経済の影響、国内外の政治不安や課題、気候変動などが経済に影響を与えることも考えられます。 賃金の上昇、消費需要拡大、企業投資の増大など良い循環が生まれることがベトナム経済の進展につながっていくでしょう。 ※①引用元URL・※②引用元URL   ベトナム政府が発表している2024年の経済成長政策は 観光フェスティバル、ショッピングフェスティバル、国内市場貿易促進プログラムによる消費を刺激する政策の実施 デジタルプラットフォームを通じた国内消費を拡大するための電子商取引 ベトナム製品の優先的な使用の奨励 農村部や山岳地帯の流通システムの近代化への投資 二国間および多国間貿易協定の活用、ベトナム製品の生産市場の拡大 外国人観光客の誘致、外貨獲得 宿泊、飲食、運輸、貿易、その他のサービス等の産業チェーンへの支援 外国投資資本の誘致 再生可能エネルギー、半導体チップ、社会経済発展、持続可能な経済発展、グリーン経済の役割を果たすその他の産業などの新しい分野への参入 農林水産物の品質の向上、付加価値の高い製品や輸出優位性のある製品への注力 以上のように、国内需要の拡大や外国資本の誘致、国内製品の市場拡大などの計画を立てています。 2024年上半期のベトナムのGDPは 6.42%増と発表され、政府は「2024 年上半期の雇用労働者と労働者の平均収入は、前年同期と比較して増加した」と発表しています。 実際に、ベトナムではイベントが多く開かれており、特に2024年5月31日から10日間にわたって開催された「第2回ホーチミン市リバーフェスティバル」では水上バイクやフライボードを使用した水上プログラムやダンス・歌・花火が披露され史上最大のイベント規模となり、多くの人で賑わいました。 (参照) TỔNG CỤC THỐNG KÊ/2023年の成長イメージと2024年の経済発展見通し・TỔNG CỤC THỐNG KÊ/2024 年第 2 四半期と最初の 6 か月の社会経済状況に明るい兆し   ベトナムの経済は急速に成長しており、平均賃金も年々確実に上がり2024年7月には地域別最低賃金が平均6%引き上げられました。 また2024年第1四半期の消費者物価指数は2023年の同時期と比べて3.77%上昇し着実な成長がみられます。 政府と銀行は緊密に連携し、賃金、物価、金利に関する包括的な政策を推進しています。これらの取り組みにより、ベトナム経済はより安定し、持続可能な成長を遂げることが期待されています。 この記事が参考になりましたら幸いです。

2024.06.24

ベトナムで家族と暮らすための帯同ビザと労働許可証(WP)の取得ガイド

ベトナムで家族と暮らすための帯同ビザと労働許可証(WP)の取得ガイド
ベトナム就職情報、ベトナム労務情報

ベトナムは年々、経済成長を遂げ日系企業の進出も活発です。こうした状況から「日本人が働きやすい」といわれています。 しかし、ベトナムで働き、家族と移住するためいくつかの手続きが必要となります。 そこでこの記事では、「ベトナムでの労働許可証の取得から家族の帯同ビザに関する手続き」や「帯同の不安を解消する情報」をお届けします。   ベトナムで家族と暮らすための一般的な流れについて解説していきます。   ベトナムで働き、家族と共にベトナムに移住するためには、 ①労働許可証の取得 ②一時在留許可証の取得 ③家族の居住許可申請 の手続きが必要です。1年を超えるベトナム滞在者には、一時在留許可証(テンポラリーレジデンスカード=TRC)の取得が義務付けられています。 労働許可証(ワークパーミット=WP)とは? 外国人がベトナムで働くために取得する証書です。 3ヶ月以上ベトナムで働く場合は、労働許可証(WP=ワークパーミット Work Permit)を取得する必要があります。 混同されやすい「就労ビザ」は、45日以上ベトナムに滞在する場合に必要となるビザです。 一時在留許可証(テンポラリーレジデンスカード=TRC)とは? ベトナムで労働許可証(ワークパーミット)の手続き後に、ベトナム国内で申請して取得します。 期限は労働許可証の有効期限に準じ、最長で5年間となっています。   労働許可証は誰でも取得ができるものではなく、取得にかかる要件を満たす必要があります。 【管理職の条件】 管理職経験者(社長、部長、マネージャーなど) ※ベトナム現地法人の社長や組織の代表者(駐在事務所長)に限る   【専門家の条件】 大学の学士号以上または学士と同等とみなされる学位を取得しており、ベトナム国内で従事する職務に関する分野での3年以上の同分野の職務経験があること。または、国外の機関、組織または企業により専門家と認定された証明書を持つ者   【技術職の条件】 高卒・専門・短大卒以上(技術に関する訓練を1年間以上)かつ3年以上の実務経験がある、もしくはベトナムでの業務に関連性のある5年以上の実務経験がある者 ※職務経験はベトナム国外での実績のみ有効となります。 ※上記は2023年11月時点の情報です。法改正等がありますので随時最新の情報をご確認ください。 独立行政法人日本貿易振興機構/外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用 在ベトナム日本大使館/労働許可証の取得に係る留意事項   最近の法改正により、ベトナムで働く外国人専門家や技術者の条件が変更されました。 以前は、「教育を受けた専門分野での実務経験」が必要であり、さらに大学の卒業学部とベトナムでの職務内容が一致していることが求められていました。新しい規定ではこの要件の一部が撤廃され、「ベトナムでの職務に適合した実務経験」が重要視されるようになりました。 (緩和された例) 経済学部を卒業し、日本で6年間ITエンジニアの実務経験がある日本人が、ベトナムでITエンジニアとして働く このように、ベトナムでの仕事内容に沿わない学歴を持つ外国人も、自分のスキルや経験を活かしてベトナムで働く機会が広がったと言えます。   「専門家」の場合、以前は日本側の企業からの証明があれば、比較的簡単に労働許可証が取得できていましたが、コロナ禍や法改正により「専門家の労働許可が下りにくくなった」という声も聞かれます。 実際に「ベトナムの日系企業から申請したところ1度目では労働許可が下りず、専門のコンサルタントを通して再度申請し、許可が下りた」という事例もあります。   多くの企業が福利厚生として「労働許可証・レジデンスカードの取得費用は全額会社負担」などのサポートを雇用条件として提示しています。 「家族とベトナムに住む予定」の方は、応募時から「帯同ビザを申請したい」と企業側に伝えておき、申請に関する手順を企業とすり合わせしておくと安心です。   ベトナムの労働許可証を個人で申請する場合は、企業側からの申請が必要なことや、ベトナム語での手続きが必要となることなどから日本人個人による手続きが難しくなっています。 このため、申請手続きは企業内のベトナム人総務スタッフ経由で申請するか、専門のコンサルタント在籍する事務所を通じて手続きするのが一般的となっています。 ジェトロのホームページでは、ビザ取得の流れについて詳しく解説されています。 独立行政法人日本貿易振興機構/ベトナムにおける労働許可書/ビザ(査証)の取得手続き   ▼労働許可証の申請方法など詳しくはこちらの記事もご覧ください 【ベトナム/就労ビザ】労働許可証(ワークパーミット)の取得方法を徹底解説! ※2023年12月最新版   労働者がビザを取得した後、家族(配偶者や18歳未満の子ども)が帯同する場合には、家族の居住許可申請を行う必要があります。 期間が1年未満だとビザ、1年以上はカードとして発給されます。 必要書類 就労者と家族のパスポート 戸籍謄本家族全員分の写し 就労者のビザ、就労者の勤め先の企業ライセンス 申請書類(勤め先の代表者の署名・押印) 証明写真 家族の健康診断書は必要? 労働許可証の申請には健康診断書の提出が求められますが、ベトナムの帯同ビザ申請や更新には家族の健康診断書の提出は求められません。   申請からおよそ2週間程度で発給されます。この期間は、パスポートが手元にないため国外への移動やベトナムの国内線であっても飛行機に乗ることができませんので注意が必要です。 また、帯同ビザの申請の前段階である、労働許可証と一時滞在許可証の取得には1カ月~最長で半年と時間がかかることもあるため、これらの手続きが完了してから「家族をベトナムに連れてくる」という人も多いようです。 帯同ビザの更新は大使館が混雑していなければ、1週間程度で完了します。 ビザとパスポートはセットで持ち歩く 発行されたテンポラリーレジデンスカードや帯同ビザは、パスポートと合わせて持ち歩くようにしましょう。 特に、飛行機に乗る際は必ずテンポラリーレジデンスカードや帯同ビザなどの「ビザ」の提示を求められます。   ベトナムでは、帯同ビザでの就労は認められていません。ベトナムで働くには先述したとおり「労働許可証」や「就労ビザ」が必要です。 しかし「越境リモート」などベトナム国外で収益が発生するものについては認められています。183日以上ベトナムに居住する人は所得に応じてベトナムに税金を支払う義務があります。 現在、ベトナム居住者における個人の所得控除は1100万VND/月以下となっており、この額を超えると累進税率が課せられます。 独立行政法人日本貿易振興機構/税制   帯同者がベトナムで就労した場合は、帯同ビザ(TT)から労働許可証(WP)に切り替えることも可能です。 この場合は、先述したように企業に応募をして労働許可証を発行する流れとなります。 実際に、ベトナムへ引っ越したことを機にこれまでの職務経験や専門性を生かしてベトナムで働いている方もいます。 しかし、労働許可証発行の性質上、1年以上勤務ができることが条件であったり、パートタイム勤務での募集は行っていなかったりする企業が多くなっています。   ベトナムで税制上の扶養控除の対象になるのは 無所得または100万VND/月以下の収入の子どもや生計を共にする家族(祖父母・甥姪・兄弟を含む) となっており、被扶養者1人につき440万VND/月の控除を受けることができます。 扶養控除を受けるためには申請が必要となります。しかし、会社によっては配偶者の日本での社会保険料を負担するところもあり、この場合は日本の扶養控除額に準ずる場合もあります。   家族の転職・異動に伴う海外赴任でベトナムに暮らすことになる方は「今後の生活はどんなだろう…?」と不安になる方も多いでしょう。 ここからは、帯同者がベトナムの生活で感じることをお伝えしていきます。   特に子どもがいる場合は、海外で暮らすことで外国語の習得が身近になることや異文化体験から将来性が広がるというメリットがあるといえます。 また、ベトナムに住むことで、ベトナム国内や周辺国へアクセスしやすく海外経験を積むことができます。   生活面や心理面において家族で協力し合えるというメリットがあります。万が一病気になった時も家族が一緒に暮らしていると安心感がありますね。 また、サービスアパートに入居することで家事負担も少なく、家族との時間や自分の時間を確保することもできます。 【ハノイ/不動産】ベトナムで絶対に抑えておきたい、賃貸探しのポイントを徹底解説!   日本とは異なる環境で暮らすことで、異文化や多様な価値観を体感することができます。 ベトナムには「大らか」「他人を気にしない」といった性格の人が多く、日本で閉塞感を感じている方にとってはおすすめです。 また、ベトナムの平均年齢は33歳と若く国全体に活気が感じられます。   企業によっては「帯同者補助」や「家賃補助」の福利厚生が充実している場合があります。 住居によっては水道・光熱費・Wi-Fiが家賃に含まれることから、自宅での水光熱費・通信費が実質無料であることも多く、「ベトナムに住むことで経済面でのメリットが大きい」と感じる方も多くいます。 また、カフェやマッサージ等を日本より安価で楽しめることから、我慢して節約をしているという感覚になりにくいこともメリットとしてあげられます。   海外在住するにあたって、企業によっては退職や休職をしなければならないこともあるようです。また、子どもがいる場合は子どもの年齢や進路によってはあえて帯同を選択しないということもよくあります。   日本にいる友人や家族から離れることから孤独感を感じたり、異文化への適応、言葉の壁から生活に不自由を感じたりしてストレスがたまってしまう人もいます。   ここからは、帯同者がメンタル不調にならないためにできる対応策についてご紹介します。   帯同者へのアンケートで帯同中のメンタル不調要因として最も上位に「仕事やキャリアから離れること」があげられます※。 キャリアを中断されることで「生きがい・自己実現・社会性」を失ったと感じたり「収入がなくなる不安」や「将来への漠然とした焦り」を感じたりします。 今後のキャリアプランを事前に描くことで、例えば「学校に通う」「資格の勉強をする」「リモートワークで働く」「現地採用で働く」「ボランティア活動をする」といった自己実現のための具体的な目標を持つことが出来ます。   現地に知人・友人がいない孤独感が、メンタル不調に大きく影響していることがうかがえることから、現地のコミュニティに参加したり現地の友人をつくったりすることで、メンタル不調が軽減される人もいます。 ベトナムには全国に多数の日本人コミュニティがありベトナムで友人を作ることもできます。 ▼気になる方はこちらの記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。 【ベトナム/生活】現地の日本人コミュニティ事情ってどうなの?気になるその種類とメリットを紹介!   「メンタルの不調の原因は何なのか」を紙に書き出し、解決できることであれば解決方法も一緒に書き出すことで思考が整理されスッキリとした気分になります。 解決しにくいことは家族や友人に発信すると、悩みを抱え込みにくく、新たな解決の視点が得られることもあるでしょう。 また、マッサージやネイルなどベトナムでも身近に出来るセルフケアを楽しむなどストレスを発散していくことも大切です。 このように、悩みを整理し一人で考え込みすぎないようにすることで、ストレスとうまく付き合っていくのがおすすめです。 ※参考:駐妻キャリアnet調べ   五つ星のホテルランチも気軽な価格 ベトナムは比較的治安もよく、親切で優しい人が多い印象です。生活環境では日本製品が手に入りやすく、日本食レストランが充実していることから暮らしやすいと感じ、ベトナムでは落ち着いて暮らすことができています。 海外在住では新しいことに挑戦できる環境に必然的に身を置くことになり、生活や環境を受け入れるまでは悩むこともあるかもしれません。 しかし、乗り越えていくことで新しい自分の一面の発見や成長を感じられるはずです。 焦りや不安を感じる場合は、まずは「家族をサポートしていること」「異文化の中で生活していること」を肯定して自分を労わるようにしましょう。   労働許可証の取得から家族の帯同に関することについて解説しました。 日本人向けの求人を出す多くの企業で申請手続きをサポートするなど福利厚生が充実しており安心です。 また、ベトナムに家族と住むことで経済面や教育面でのメリットが大きくなったという方が多く、帯同者のメリットもあります。 この記事が、ベトナムでの就労や生活に役立ちましたら幸いです。   「べとわーく」ではベトナムで役立つ情報を随時発信しています。他の記事もぜひご覧いただき、ブックマークをよろしくお願いいたします。

2024.04.22

日系企業のベトナム進出!躍進する有名企業と今後期待の日系企業をご紹介!

日系企業のベトナム進出!躍進する有名企業と今後期待の日系企業をご紹介!
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今や世界でも有数の日系企業進出国であるベトナム。 日本企業の現地法人数が多い国ランキングで、1位中国、2位アメリカ、3位タイ、4位シンガポールに次いで5位となっています。 順位 国名 日系企業現地法人数 1位 中國 6,862 2位 アメリカ合衆国 4,222 3位 タイ 2,753 4位 シンガポール 1,576 5位 ベトナム 1,463 ※海外企業進出総覧国別編(2023年版)より抜粋 また、数年前と比較すると、ベトナムの日系企業数の伸び率は急激で、4位のシンガポールに迫る勢いです。 日系企業が今急速に進出を果たしているベトナムですが、ベトナム国内ではどのような日系企業が有名なのでしょうか? こちらの記事では現在のベトナムでの日系企業進出状況とベトナムで有数の日系企業を紹介していきます。 これからベトナム移住を検討している方や、仕事でベトナムに関わりのある方は必見です!   ベトナムは現在世界有数の日系企業進出国であることを紹介しましたが、ここまで日系企業が進出するようになったのは1990年代までさかのぼります。 1986年にベトナムがドイモイ政策を採択し市場経済への移行を進めたことをきっかけに、外資を投入し外国企業の投資先として誘致する政策を始めました。 ベトナムは豊富な労働力と人件費の安さによって製造業にとって魅力的な国ではありますが、当時は製造業を誘致する場所がなかったため、日商岩井(現:双日)と住友商事の2社が工業団地建設を行い、大手企業の進出を後押ししました。 そこから徐々に製造業のベトナム進出が進み、2000年代になると保険や金融業など製造業と密接にかかわる業種の進出が進み、2010年を過ぎる頃からは飲食業やIT企業、各業界の中小企業なども進出を図るようになりました。 その結果、現在ホーチミン商工会議所への登録企業が1052社(2024年4月現在)(※1)、ハノイ・ハイフォン等を含む北部を管轄するベトナム商工会議所の登録企業が1,541社(2024年4月現在)、ダナンが約130社、合計3000社近い企業が登録しています。 外務省の海外進出日系企業拠点数調査(※3)によると2022年時点では、ベトナム進出日系企業は2373社と発表されていましたが、直近2年での進出企業数の多さを実感するとともに、もちろん登録していない企業も沢山あるため実際はもっと多くなると思われます。 進出企業数が増えると同時に、在住邦人数も軒並み増えており、コロナ禍で少し目減りしたものの2万人を超える日本人がベトナム在住となっています。 今後も増えることが予想されており、日系飲食店などの進出も加速しています。 ※1ホーチミン日本商工会議所より抜粋 ※2 ベトナム日本商工会議所より抜粋 ※3 海外進出日系企業拠点調査/外務省より抜粋   ベトナムには2000を超える日系企業が進出していることを先述しましたが、実はベトナム人にとって欠かせない有名な日系企業も沢山あります。 誰もが知る有名企業から、ベトナム現地で広く愛されている企業、今後の躍進が期待される企業まで、激戦した5社をこちらで紹介します◎ 世界のHONDAはもちろんベトナムでもトップクラスに有名な企業です。 世界中どこに行っても知られている会社と言っても過言ではありませんが、ベトナムはその中でも特にHONDAの認知度は高い国ではないでしょうか。 ベトナムは世界屈指のバイク大国であり、人口100人あたりバイクの所有率が72台(2020年現在)。子供を抜けば実質1人1台持っていると言えるでしょう。 そんなベトナムで最初に普及した二輪車がホンダなのです。そのため『HONDA』を知らない人はベトナムにはいない、非常に有名な日系企業です。 現在もなお、ベトナムでのバイク販売台数はHONDAがシェア1位です。   続いては日本でも誰もが知っているUNIQLO。 UNIQLOはベトナムでも今や知らない人はいない程有名で、どこのショッピングセンターに行ってもテナントが入っている程です。 日本ではファストファッションで低価格かつ高クオリティが売りのUNIQLOですが、ベトナムでは中価格帯でクオリティが高いブランドです。 ベトナムの一般家庭では少々手が出しにくく、セールになっている商品を買うベトナム人も多いようで、人気の高さがうかがえます。 クオリティが高いことはベトナムでも広く知られており、UNIQLOは何回洗ってもくたくたにならず、仕事などで着ている人も多くいます。 日本製品かつ場面を選ばないシンプルなデザインで、何か困ったときにUNIQLOが近くにある安心感は大きいのではないでしょうか。 日本と比較すると価格は30~50%程割り増しされているので、日頃からの愛用品などは日本への一時帰国時にまとめて購入がおすすめです。   日本ではワンタン麺でおなじみのAcecook。実は日本国内よりも収益が高いのはベトナムエースコックであり、ベトナムで大成功した日系企業のひとつです。 Hao Hao(ハオハオ)という即席めんシリーズはベトナムの国民食で、あまりにもベトナムに根付いていることからAcecookはベトナム企業だと思っているベトナム人も少なくありません。 ベトナムでは即席めんが安くて美味しい日常食として、食卓には欠かせないものとなっており、その先駆けとなったのがAcecookなのです。 Hao Haoに加えて、インスタントフォーや春雨などの様々なインスタント食品を展開しており、日本人の口に合うもの多いためお土産にもおすすめですよ。 どこのスーパーやコンビニに行っても絶対に売っていますので、是非お試しください◎   コーヒーで有名な日本企業の一つがUCCですが、コーヒー大国ベトナムにも進出しているのがUCC上島珈琲ベトナムなのです。 駐在員事務所を置いていましたが、2018年に現地法人を設立し、同社が運営するカフェ「UCCコーヒー・ロースタリー」がホーチミンにあります。 ベトナムは従来よりコーヒー文化が長く根付いていますが、ロブスタの苦みの強い豆をコンデンスミルクなどでマイルドにして飲むベトナムコーヒーが主流でした。 しかし近年スターバックスなどのエスプレッソ系飲料に加え、最近では高品質な豆を使用し、一杯ずつハンドドリップで淹れるサードウェーブやスペシャリティコーヒーがブームになりつつあります。 UCCコーヒー・ロースタリーもまさにその一つで、ベトナムのおしゃれな若い世代からの人気が高まっており、ワッフルやサンドイッチなどの軽食も美味しいと話題です。 世界第2位を誇るコーヒー豆の生産地かつ、カフェ激戦地であるベトナムで挑戦し、高い人気を誇るUCC上島珈琲ベトナムに今後も注目です◎   システムキッチン・システムキッチン・バスを中心とした住宅設備機器メーカー・タカラスタンダード株式会社が、現在ベトナムのキッチン業界で人気急上昇中なのです。 高温多湿なベトナムの気候にぴったりの、湿度や熱に強く水分や汚れに強い素材『高品位ホーロー』を使用したシステムキッチンで、現在ベトナム国内での売上を順調に伸ばしています。 ハノイのHDIタワーのキッチンに採用されるなど、現在ベトナム国内のキッチンや洗面所事情の品質向上に一役かっている企業です。 まだまだホーロー製品の良さはベトナムで普及中のため、今後もショールームを増やして実際に見てもらえる機会を増やしていく予定のタカラスタンダード。 ベトナムでのさらなる活躍が期待されている企業です!   現在ベトナムに進出する企業が2000社を超えるに至った変遷を紹介しました。 実際にベトナムに住んでいる筆者は、日々肌でベトナムの経済成長を感じ、至る所で日系企業の存在を目にしています。 ただ、ドイモイ政策を皮切りに1990年代からここまで日系企業が進出する背景には、ベトナム人が勤勉であることや経済成長を果たすため国を挙げて尽力したこと、日系企業の努力など様々な要因がありました。 また、同じ日本人としてはベトナムで活躍している日系企業が多く存在していることは誇りであり、今後の日越経済のさらなる成長に期待します。 先駆者たちが作り上げたベトナムの親日に感謝しつつ、筆者もベトナムへ貢献できるよう尽力したいと思うばかりです。 これからベトナムにかかわる仕事をする方々にとってこちらの記事が参考になれば幸いです。

2022.12.01

ベトナムのビザ・労働許可証取得の基本情報/注意点(2022年12月時点)

ベトナムのビザ・労働許可証取得の基本情報/注意点(2022年12月時点)
ベトナム労務情報

日本本社からベトナム支社へ駐在員を派遣したい! ベトナム法人が独自で日本人を採用したい! など、ベトナム国内にある企業で日本人(ベトナムでは外国人になります)に勤務をしてもらう場合、ベトナムでは労働許可証=ワークパーミットの取得が必須になります。 労働許可証の取得は、ベトナムで外国人を雇用する法人、ベトナムで働く外国人の義務であり、必要な手続きです。 この労働許可証が無いと、ベトナムで働くことはできず、最悪の場合、ベトナム法人は罰則や業務停止などのペナルティを受ける可能性もありますので、注意が必要です。 最近では、とくに新型コロナウイルスの影響で労働許可証の取得ハードルが高くなっています。 事実、2021年以降、取得が難しくなったことでベトナムで働くことができない外国人が多く現れました。 本記事では2022年12月時点での労働許可証(ワークパーミット)やベトナムビザの種類・取得方法について解説します。新型コロナウイルス後の法改正の変更点や注意事項なども記載しておりますので、参考にしてください。 *2021年9月9日の新法改正に基いた情報(2022年12月5日執筆)となります。   ベトナムへ渡航する前に、まず考えなくてはならないのはビザです。 15日以内の観光目的のベトナム滞在であれば、日本のパスポートがあればベトナムビザ取得は必要ありません。 しかし、15日以上ベトナムに滞在する場合はベトナムビザの取得が必須となります。 ベトナムビザの種類は全部で20種類あります。滞在目的によって取得するビザの種類が異なるため、取得申請時には、どの種類のビザが適しているか調べておくことが重要です。 ベトナムのビザ 種類一覧表 タイプ 対象者 最長期間 NG1 共産党書記長、国家主席、国会議長、首相に招かれた代表団のメンバー 12ヵ月 NG2 党中央常務委員会、国家副主席、国会副議長、副首相、祖国戦線主席などに招かれた代表団のメンバー 12ヶ月 NG3 外国の代表機関、領事機関、国連に属する機関などのメンバーとその家族、使用人 12ヶ月 NG4 外国の代表機関、領事機関、国連に属する機関などに就労する人やそれらの期間を訪問する人 12ヶ月 LV1 党中央に属する機関、国会、政府、祖国戦線、最高人民裁判所、最高人民検察院、国家監査院、中央省庁、中央直轄市・省の人民委員会などに就労する人 12ヶ月 LV2 政治・社会組織、社会組織、ベトナム商工会議所に就労する人 12ヶ月 DT 外国人投資家、外国人弁護士 5年 DN ベトナム企業を訪問する外国人 12ヶ月 NN1 国際組織のプロジェクト、外国の非政府組織の駐在事務所の所長 12ヶ月 NN2 外国企業の駐在員事務所、支店の代表者および外国の経済組織、文化組織、その他専門組織の代表者 12ヶ月 NN3 非政府組織、駐在員事務所、外国企業の支店、外国の経済組織、文化組織、その他の専門組織の駐在員事務所に就労する人 12ヶ月 DH3 研修・学習する人 12ヶ月 HN 会議やシンポジウムに参加する人 3ヶ月 PV1 常駐するジャーナリスト 12ヶ月 PV2 短期期間の活動を行うジャーナリスト 12ヶ月 LD 外資の企業に就労する人 2年 DL 観光客 3ヶ月 TT LV1、LV2、DT、NN1、NN2、DH、PV1、LDビザが発給される外国人の両親や配偶者および18歳未満の子供かベトナム国民の両親、配偶者、子供 12ヶ月 VR 親族訪問、その他の目的の人 6ヶ月 SQ 出入国管理法第17条3項に該当する人 30日   このように見ると、種類が多岐にわたっており、一見複雑です。 特別な理由や背景がない限り、上記の観光ビザ(DL)やビジネスビザ(DN)の取得について調べておけばよいでしょう。 ベトナム大使館・領事館で申請し、取得します。 パスポートと証明写真(3cm x 4cm)に加えて申請書(大使館ページよりダウンロード可能)と申請料を合わせてベトナム大使館・領事館にて申請します。 在日ベトナム大使館・領事館であれば、観光ビザの発行は即日に行われ、直ぐに取得出来ます。 ベトナム大使館ページはこちらからお願いします。 ビザの種類が決まれば、次に労働許可証(ワークパーミット)について考える必要があります。 労働許可証(ワークパーミット)があって、はじめてベトナムで正式に働けるようになります。 ここではベトナムで働くのに必要な労働許可証(ワークパーミット)について説明していきます。 労働許可証(ワークパーミット)の種類は3つあります。  管理者/経営者・・・ベトナム現法の社長など ・企業組織における管理者としてのスキルを有していること。  専門家・・・営業職やバックオフィスのスタッフなど ・ベトナムで就労するポジションに関して「大卒+3年以上の実務経験」又は「国家資格+5年以上の実務経験」を積んでいること※【補足】2021年9月の規制緩和により、「卒業した学部」と「職務経験」は関連性がなくとも条件クリアに変更!  技術者・・・特殊なスキルを有したメーカー技術スタッフなど ・「関連分野の技術に関して1年以上のトレーニングを積み、関連分野で3年以上の勤務経験があること」※【補足】2021年9月の新法改正により、大卒でなくとも”技術者としての実務経験を5年以上有れば”条件クリアに変更!   新型コロナウイルスの大流行で世界の経済や政治は、かつてない大混乱に陥りました。 ベトナムにおいても例外ではなく、労働許可証(ワークパーミット)についても取得が厳しくなりました。 これまで、労働許可証の種類は3種類あると説明してきましたが、法改正により、審査基準が厳しくなったのは「専門家」の労働許可証です。 具体的には、法改正の前までは高卒でも、「専門家であることの証明書」という定義があいまいな書類さえあれば「専門家」として申請が通っていました。 しかし、2021年9月の法改正後は「大卒+3年以上の実務経験」または「国家資格+5年以上の実務経験」でないと審査が通らなくなりました。   「専門家」については厳しくなりましたが、「技術者」については逆にゆるくなりました。 法改正前では、3年以上の実務経験に加えて「1年以上の研修経験」の証明書が必要でしたが、2021年9月改正後は、新しい枠組みが増え、「5年以上の実務経験」の証明書のみでも申請可能となりました。 つまり、「専門家」と違って、技術者では、「高卒でも5年以上の経験さえあれば申請ができる」ことになり、シンプルになった点は大きなポイントと言えます。 また、今回の法改正で、ベトナム人と結婚された方は、労働許可証を取得しなくてもベトナムで働くことができるようになりました。   実際に労働許可証(ワークパーミット)を取得する際の注意点について説明していきます。 ベトナムという国は書類の手続きなど、必要以上に時間がかかります。 日本でもお役所仕事は時間がかかりますが、体感では日本の2~3倍以上の時間が必要です。 時間に余裕を持って申請しないと「滞在ビザが切れた!」などの事態に巻き込まれる可能性も高くなります。 労働許可証(ワークパーミット)を取得する場合は全て自分一人で申請する人はほとんどおらず、ベトナム法人の総務スタッフなどに依頼するケースが大半です。 その場合、上述した「観光ビザ=滞在期限3ヶ月」のビザを持ってベトナムに入国し、直ぐに労働許可証(ワークパーミット)の申請を進め、3か月以内に取得する。 というフローになります。 ワークパミット取得の基本的流れ 観光ビザでベトナムに入国 入国後、ベトナム法人のスタッフに頼んでワークパーミットを申請 1~2ヶ月掛かる 観光ビザの期限(3ヶ月)が切れる前にワークパーミット取得 取得した日から2年間はワークパーミット有効   観光ビザの期限が切れる前に労働許可証(ワークパーミット)の許可がおりれば、2年間は何も気にすることなくベトナムで働くことができます。 ベトナムで働く多くの日本人の方はこのフローで労働許可証(ワークパーミット)を取得しています。 以上、ベトナムで働くために必要なビザと労働許可証(ワークパーミット)について説明させていただきました。 新型コロナウイルス前後で法改正が加わり、「専門家」の申請基準が厳しくなり、「技術者」の申請基準がゆるくなりました。 今後も社会情勢に応じて変更が加えられることが予想されますので、ベトナム現地企業のスタッフと連携して日頃から最新情報を取っておくことをオススメします。