今回は、ベトナムに住んでみて見えてきた、ベトナムのイメージと実際の感想についてご紹介します。
「ベトナム料理」「バイク」「アオザイ」「ベトナム戦争」「ベトナムの産業」については下記の記事にて実際の感想をお伝えしています。
ベトナムのイメージ①発展途上国

ベトナム統計総局が公表した、2022年第2四半期のベトナム全国の平均月収は660万ドン(約3万8,280円)、年収にすると79,200,000ドン(約459,360円)です。現時点で市内にも地下鉄や都市ガスなどの充分なインフラがないことや、公共医療環境から発展途上国だと考えられています。
しかし、2020年にアメリカが貿易相手国の発展途上国優遇リストからベトナムを除外したことがニュースになりました。またベトナム統計総局は2023年第3四半期(7~9月)の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同期比2.89%と発表しました。
実際にベトナムの物価は毎年上昇を続けており、それに伴い賃金も上昇を続けています。
筆者が在住して感じたこと
中流層のベトナム人が増えている
英ワールドデータラボWorldDataLab=WDLの調査によると、ベトナムは2030年までに新たに2320万人が中流階級に分類され、中流階級の人口が10年間で最も増加する国の1つになると予想されているそう。
ホーチミン市内にも新しい分譲マンションが立ち並び、1区などの中心街のカフェやレストランの飲食費の値段は日本と変わらないかそれ以上が多い印象です。
全国の給与平均が低いため「何でも安く、貧しい暮らしをしているのでは?」と思っていましたが、農村部と都市部では生活水準も大きく異なるようです。
プチ贅沢が安い
物価が上昇しているとはいえ、日本よりも割安に感じるものもあります。90分のマッサージが2000円程度~、デザインネイルが1000円程度~と日本と比較して格安でサービスを受けることができます。
カフェは200円程度~でフラペチーノやフルーツジュースを飲むことができ、カフェ激戦区の市内繁華街では、内装に凝ったおしゃれなカフェもたくさんあります。
ビールは1缶50円程度~。お店で飲んでも200円程度~と晩酌が捗ってしまう価格帯です。味も暑い気候に合うさっぱりとしたものが多く、フレーバー付きや輸入ビールなどその選択肢も豊富です。
公的な医療事情が不安定
ベトナムで救急車を呼ぶ場合はお金がかかります。また交通状況などからすぐに駆け付けることが難しく、ベトナムの公共医療では診察時間がかかったり、高度な治療ができなかったりする場合もあるそうです。
個人で医療保険に入っておくと、英語や日本語が通じる・高度な医療が受けられるという安心感があるため、長期間ベトナムに滞在する際は医療保険に加入するのが安心だと実感しています。
物乞い行為は禁止
ベトナムでは物乞い行為が禁止されており「見かけた場合は社会保護部に連絡するように」と通達がされています。
交通量の多い市内では子どもや高齢者・障害者の物乞いを稀に見かけることがありますが、筆者の感覚では周辺の東南アジア国と比較してもその数は少ないと感じます。
物乞い行為をする人の多くはすれ違いに軽く声をかけたり、手を差し伸べたりする程度で、いつまでも付きまとったり車の窓をしつこく叩いたりすることはありません。
ベトナムのイメージ②犯罪者が多い

2022年の厚生労働省の発表では、日本に在籍している外国人の中でベトナムが最も多く 462,384 人(外国人労働者数全体の25.4%)となっています。令和4年版 犯罪白書によると窃盗は、ベトナムが2,653件(検挙人員937人)と最も多くなっています。
日本のニュースでもベトナム人の犯罪がたびたび取り上げられ、日本国内の技能実習生の待遇や就労後のケアが問題となっています。このようなことから「ベトナム人は犯罪者が多いというイメージ」に繋がるのかもしれません。
筆者が在住して感じたこと
治安が良い
ベトナムでは外国人を巻き込んだ大規模なデモやテロ行為が比較的少ないと言われています。スリやひったくりは稀に報告されますが、銃や凶器で脅されるということはありません。
また、女性だけでも街中を移動することができ、特に一人でタクシーに乗ることも安全だとされています。周りを確認する、持ち物をしっかりと身に着けるなど対策をしていれば大丈夫です。実際に住んでいても、街中では緊張感や危険を感じたことはなく、素朴で平和な街だと感じる場面が多いです。
夜間も明るい地区を歩くのは大丈夫です。ですが、「暗い」「周りに人がいない」「道をまり知らない」などの場合はタクシーを利用するのが安心ですね。
旅行者など不慣れな人が狙われやすい
人が多く集まる観光地や繫華街で、不慣れな旅行客は特に狙われやすいと感じます。その理由としては
お金を持っていると思われる
人が良くNOと言えない
防犯対策が緩く狙いやすい
旅行中で注意力が散漫になっている
旅行中のため泣き寝入りしてしまう
知らずに治安の悪い場所に入ってしまう
などが挙げられます。「外国人」だというだけで狙われやすくなるため、日頃から犯罪に合わないよう自衛していくことが大切だと感じています。
ベトナムのイメージ③衛生面が心配

ベトナムは外食文化のため屋台がたくさん立ち並んでいます。常温で保存された食材をその場で調理して路上でいすに座って食事をとる様子はどこでも見られます。
食べかすやゴミをそのまま放置したり、道にゴミを捨てたりする光景も当たり前です。ゴミの回収が間に合わず「道路が臭う」なんていうことも。このような習慣はキレイ好きな日本人にとっては違和感を感じる方もいるかもしれません。
ベトナム人は「後でお店の人が一気に片づけた方が効率的」「道を掃除する人がいるから大丈夫」といった感覚のようです。
筆者が在住して感じたこと
水道水は飲めない
500㎖の水が約50~60円程度で、自宅用のウォーターサーバーの水(16L前後)は1つ300円程度で購入することができます。
ベトナムで生活をし始めた当初は、水道水とミネラルウォーターを使い分けること悩むこともありました。しかし、今ではすっかり慣れてしまいました。日本の多くの都市は水道水がそのまま飲めるので、世界でも数少ない国だということに改めて気づかされ、そのありがたみを実感しています。
病気は自己防衛
現地の人たちが美味しそうに食べている屋台メシにチャレンジしてみたいと思っても「食中毒」を恐れてなかなかチャレンジできないことが多々あります。特に、渡航直後は環境に慣れておらず食中毒を起こしやすく、生食や氷を避けた方が言われることもあります。
道路が臭うことについては、ベトナムの屋台では「発酵調味料」のヌクマムを使用していることが多く、その独特な発酵臭が慣れないにおいの為、日本人にとって「腐った臭い」と感じてしまうこともあるかもしれません。
一般的に恐れられている狂犬病やデング熱ですが、ハノイやホーチミン市内にいる限りは被害にあうことは少ないと感じます。郊外に行く場合は虫よけを使うなど、十分に注意した方がよいでしょう。
渡航前の予防接種の実施や怪しいと思ったものは食べ進めない、衛生面で気にかかる環境を避けるといった自己防衛が有効だと感じます。
中心街のトイレはきれい
海外で心配になってしまう事のひとつが「トイレ事情」ではないでしょうか。ベトナムでは「基本的にトイレットペーパーは流さない」というのがマナーになっています。
気になるトイレの衛生状態はというと、筆者が行ったことのあるホーチミンの中心街のデパートやカフェのトイレは綺麗でした。昔ながらのトイレでは手桶の水で流すところもあるそうですが、見かけたことはなく「床が水浸しで困る」ということに遭遇したことはありません。デパートのトイレが無料というのも海外では嬉しいポイントです。
トイレットペーパーを流すかどうか迷っていた際、ベトナム人にトイレ事情を尋ねたところ「ペーパーを流さないでと注意書きがされてなければ流しても大丈夫」「私もうっかり流してしまうことがある」と話してくれました。トイレによっては詰まってしまうため外出先ではゴミ箱に捨てて、ホテルや自宅では「トイレットペーパーを流せるか」あらかじめ確認すると良いでしょう。
ベトナムのイメージ④共産主義

ベトナムの正式国名は「ベトナム社会主義共和国」ベトナムの政治は、日本のように与党や野党がなく、共産党の一党独裁です。ベトナムが一党独裁政治をとったのは、フランスからの植民地支配から独立するためという歴史的経緯があります。戦争に勝つために、国全体が団結する必要がありました。そこで、独立運動の主導者ホー・チ・ミン氏は、ベトナムの北側の地域を中心に、ソ連や中国から学んだ社会主義を浸透させました。
社会主義とは
国民で作り出した利益は国のものであり、これにより国民全員が平等になるという考え方です。社会主義の考えが生まれたきっかけは、資本主義の失敗があったからです。社会主義の考えが生まれる前の世界は、資本主義が主流でしたが、資本主義の拡大は、雇用者と労働者の貧富の格差を生み出してしまいました。
そこで、ロシアのマルクスとエンゲルスは、作り出された利益を個人が持つのではなく、国が所有することで、国民全員が平等に恩恵を受けられるようにしようと考えます。この考えをもとに、20世紀初め、ロシア革命が起こり、社会主義が生まれました。
共産主義をわかりやすくいうと、資本や財産をみんなで共有する平等な社会体制で社会主義の進化版ともいえます。旧ソ連が崩壊すると、共産主義と社会主義の違いは曖昧となり、現代ではほぼ同じような意味として捉えられている部分もあります。
筆者が在住して感じたこと
ドイモイ政策で経済活動が活発
一党独裁について「自由がない」「警察が厳しい」などのイメージを持つ方も多いかもしれません。しかしベトナムでは1986年からドイモイ政策を導入し、社会主義の緩和を行うことで、市場経済の導入し、自由な経済を取り入れ、また国際社会への参加を進めることを目標にし、経済成長を遂げてきました。
「公の場で国の批判をしてはいけない」「警察や軍の写真を撮ってはいけない」などの厳しい法律がありますが、実際に住んでみると「警察や軍が厳しい」という場面を見るたり感じたりすることはありません。
ベトナム人も休日はカフェでおしゃべりをしたり、ショッピングモールで買い物をしたり、ネットフリックスやYouTubeを見たりして過ごしています。
祝日が少ない
ベトナムの祝日は年間11日で日本の16日と比べると少なく、旧正月の時期にある大型連休の公式な日程も毎年11月~12月頃に発表されます。
一方でベトナムでは従業員に年間12日の有給休暇を取ることができると法律で定められていることもあり、多くの方が祝日以外にも有休を使って思い思いのタイミングで連休を取っているようです。
残業する人が少ない
ベトナム人は家族やワークライフバランスを大切にする文化が根強く就業時間が来たらすぐに帰宅する人がほとんどです。アフターファイブは、家族で食事をとったりカフェで友達と話したり、自分のスキルアップのために勉強したりと思い思いに過ごします。
「就業時間以外に働くのは能率が下がる」と考えるベトナム人も少なくないようです。ベトナムの労働法では平日の残業代は給与の150%以上、休日は200%以上と定められており、ある意味会社のことも考えた合理的な考え方なのかもしれませんね。
賄賂文化が残る
2023年のベトナム政府発表によると役職における汚職犯罪が51%増加しており、2022年10月1日から2023年9月30日までに、前年同期と比較して、経済管理秩序に関連した犯罪が5,715件(11.69%増)、汚職と地位に関連した犯罪が793件(51.63%増)摘発されたそうです。
ベトナムでは役人へ賄賂を渡すことが昔から横行しており「賄賂を渡すことによって手続きを滞りなくしてもらう」ということがよくあると言われています。
一方で、ベトナム人に差し入れやプレゼントを渡すと思い切り喜んでくれます。友達や知り合いなどと良好な関係を築きたいと思う場合にはプレゼントが有効な手段なのは間違いないと実感しています。
お客様視点があまりない
お店などで情報が更新されていなかったり、店員が暇な時はお喋りしたりスマホを触ったりという場面をよく見かけます。日本人は使う人の視点に立ったサービス提供やルール作りが得意ですが、ベトナム人はあまり得意ではなく、はっきりとしたルール作りや約束事を避ける傾向にあると感じます。
ベトナム人の性格をひとまとめに語ることはできませんが、筆者の周りには「分からないことや困ったことは聞いて!」「終わり良ければすべて良し」というスタンスのベトナム人が多いと感じます。
求めると親切に対応してくれる人が多く、ベトナムでは恥ずかしがらずに根気強くはっきり話すコミュニケーションが大切だと実感しています。
ベトナムは外交上手
日本人は「ベトナムは共産主義で中国寄りなのでは?」と思う方も多いかもしれませんが、1978年のベトナムによるカンボジア侵攻によって対立を深め、翌年、中国軍がベトナム北部の国境地帯に侵攻する「中越戦争」をきっかけに、ベトナムの中国への警戒心は強いと言われています。
最近でも公開された映画で「中国が南シナ海の権益主張に用いる独自の境界線のようなものが映っている」ということを理由に、ベトナムで上映禁止にするなど毅然とした対応をしています。
また、ベトナム戦争時に南ベトナム政府に干渉したアメリカとの関係ですが、2023年9月の外交会談では、ベトナムは米国との外交関係を最上位に引き上げました。
2022年のベトナムの貿易相手国ランキングは1位が中国、次いで米国となっており、両者ともよい距離感で関係を築いている外交上手な国であると感じています。
ベトナムのイメージ⑤蒸し暑い熱帯気候

ベトナムは南北に長く、日本の4/5の国土面積で「北海道から本州まで」と同じぐらいの大きさです。そのため、都市によって気候が異なります。
| 都市名 | 最高気温 | 最低気温 | 特徴 |
| 北部 ハノイ(首都) | 30℃前後 | 10℃前後 | 四季がある |
| 中部 ダナン | 30℃前後 | 20℃前後 | 乾季と雨季 |
| 南部 ホーチミン | 30℃前後 | 25℃前後 | 乾季と雨季 |
ホーチミンは年中常夏で2シーズンに分けられ、「4~10月の雨季」「11月~3月の乾季」となっています。年間平均気温は28℃で、近年の日本の夏よりも涼しく感じる日が多く、とても過ごしやすいです。
南国の気候のせいかホーチミンの人たちは「陽気で親切な人が多い」といわれています。夜になると中心街の「グエンフエ通り」には食事やおしゃべり、カラオケなどをしにたくさんの人が集まり、毎日お祭りのような活気があります。
中部のダナンは冬には最低20度程になり、肌寒く感じる日もあります。
北部のハノイは日本のように四季を感じることが出来、冬場はコートが必要なほど寒くなります。
筆者が在住して感じたこと
雨を予知できる
比較的ベトナムの雨は「短時間の豪雨」の割合が多く、日本の梅雨のように1日中雨ということはめったにありません。在住歴が長くなると「気圧が重いな」「風が強くなってきたな」と感覚で雨が降りそうだと分かるようになってきました。
雨季の場合、午後から降ることが多いため午前中からの活動がおすすめです。雨が降ったときは、カフェなどでしばらく過ごせば止んでしまうので、実はホーチミンで傘の出番はあまりありません。
何でも音量が大きい
陽気な人が多いホーチミン。路上で音楽を鳴らしたり、カラオケをしたりするのは日常的な光景です。しかし、その音量はおそらく日本人の想像よりもかなり大音量です。
クラクションも「通ります」という合図で頻繫に鳴らします。また喋り声が大きい人も多く、バイクに乗って喋っている人の声が車の中からでもはっきり聞こえてくるほど。
「夜中まで大音量」ということはありませんが、静かに日常を過ごしたい場合は繫華街の中心での滞在を避けると良いでしょう。
親しみやすく親切な人が多い
「バッグの蓋が開いているよ!」「スマホとられないようにね」など知らない人でも気さくに教えてくれます。おおらかな人が多く、間違えたり失敗したりしても厳しい目線を向けられるという経験はありません。
また、子ども好きな人が多い印象で、子どもが泣いたりうるさくしたりしても日本のように責められることがありません。お店では子どもをあやす従業員の姿もよく見られます。
いい意味で「人のことを気にしない」タイプの人が多く、日本の優しさとは違う「優しさ」を実感しています。
まとめ

ベトナムのイメージと現地在住者の忖度なしの感想をお伝えしました。
ホーチミンにはいい意味で「おおらか」で「気にしない」人が多く、外国人にも寛容です。南国ならではの開放的な雰囲気を味わえ、日本で閉塞感を感じている方におすすめと言えます。
一方で、経済成長を続けるベトナムにおいては、日本人ならではの感性も求められていると実感します。日本で培ったキャリアがベトナムで活かされるということも珍しくありません。
ベトナム転職について専門的なアドバイスが欲しいという方は、HRnaviのコンサルタントに気軽にご相談ください。
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