ベトナムや旧暦を使用している国、中国や台湾ではよく耳にする“中秋節”という行事。
日本人にとっては馴染みがなく、どのような日か知らない方も多いのではないでしょうか。
ベトナムに住んでいると、1か月以上前から中秋節のお祝いムードが始まり、年間の行事の中でも重要なイベントの一つです。
こちらの記事では中秋節の歴史から、お祝いの方法まで解説します◎
ベトナムに住んでいる方にとっては切っても切り離せないイベントですので、知らない方は要チェックです!
ベトナムの中秋節とは
中秋節とは…?
中秋節とは、旧暦の八月十五日にお祝いされる節句の一つで、お月見の風習です。
日本でいうところの、“ 十五夜 ” がこの中秋節にあたります。ススキを飾り、お団子をお供えして月を見る、お月見という習わしがありますよね◎
日本では盛大にお祝いすることはありませんが、中国や台湾をはじめとして、ベトナムなど旧暦を使用している国では重要な位置づけにあり、毎年お祝いを盛大に行います。中秋節のルーツは中国にありますが、ベトナムと中国では類似点はあるものの、実施される行事も意味合いも異なります。
ベトナムでは紅河デルタ水稲文明から始まったとされ、農作物が収穫された後、休息したり宴を楽しんだりする収穫を祝うお祭りとされています。
お供え物を用意し、家族でお祝いをし、子供たちから両親に贈り物をすることもあります。
また、ベトナムでは子供のためのお祭りとされており、子供たちが灯籠をもって練り歩く催しが各地で行われています。
行事の詳細はこの後の項目でご紹介していきますので、是非チェックしてみてください。
中秋節の歴史
中秋節のはじまりは古代中国(唐の時代)と言われており、その後形を変えながら各国に広まった文化です。
日本では十五夜として、お月見をしながらお団子を食べる風習がベトナムの中秋節にあたります。
ベトナムでは、Tết(テト) =節、Trung=中央、Thu=秋という意味を表す、” Tết Trung Thu(テット・チュン・トゥー) “と呼ばれています。
当時は、月を見ながら家族で円卓を囲んで食事をすることが幸福を運んでくるとされていました。
現在のお祝い方法に至った背景には、各国それぞれ言い伝えがあります。
ベトナムではよく出てくる伝説のおとぎ話が3つあり、その中でも有名なCuoiおじさんのお話をこちらでは紹介します。
≪中秋節の言い伝え -Cuoiおじさん-≫
心優しいCuoiは万病に効くガジュマルの葉で多くの病人を救っていました。この木はきれいな水をやり、しっかり育てなければ月に帰ってしまうと言われていました。
それを聞いたCuoiは、熱心にそのガジュマルの木を守っていました。
しかしある日、忘れっぽいCuoiの妻がその言いつけを忘れて、木に向かって放尿をしてしまったのです。
すると突然地面が動き出し、風が吹き、ガジュマルの木が力強く青空に根を下ろし始めます。 月に帰ってしまわないようCuoiは急いで飛びついて木をつかみましたが、敵わずガジュマルの木が彼を引っ張って月まで飛んでいってしまいました。
それ以来、満月の日、月が最も明るいときに見上げると、古い木の形をした黒い点があり、その下に誰かが座っているのが見えます。
それは、ガジュマルの木の下に座る地球に戻る日を待っているCuoiであると。そんなCuoiおじさんに地球に戻ってくるための道しるべとして、中秋節の日には子供たちが提灯を持って行列を作っているのだと…
中秋節の行事
中秋節がどのような日なのか分かったところで、ベトナムで実際にはどんな催しが行われているの…?
そんな疑問にお答えするべく、当日の行事を一挙ご紹介!中秋節当日は街中がお祭り騒ぎとなりますので、是非一度は体験することをお勧めします◎
①獅子舞
中秋節当日やその前の週末になると、獅子舞を街で見かけることができます。基本的に獅子舞は男性2人で頭と胴体に分かれて獅子頭(ししがしら)を被り、街中で舞い踊ります。
また家を訪れる獅子舞もあり、家の中に入り、幸運を祈ったり悪いものを祓うために踊ってくれるので、その後謝礼を渡すのが習わしです。
ハノイの旧市街やホーチミンのグエンフエなどに行くと、獅子舞を見かけることができます◎
灯籠・提灯
ベトナムで中秋節を楽しむなら、なんといっても灯籠は欠かせません!
時期が近づくと、通りで様々な灯籠が販売され始めるのですが、伝統的なものから、最近ではキャラクターの灯籠や蛍光で点滅する灯籠、星形の灯籠など多種多様です。
ハノイではHàng Ma(ハンマー)通りがテトや中秋節の飾りを販売している通りとして有名です。
ホーチミンではNguyễn An(グエンアン)通りやNguyễn Trãi(グエンチャイ)通りが盛り上がります◎
見て歩くだけでも華やかで楽しいので、是非この時期には通りを歩いてみてください。
子供たちの仮装
ベトナムでの中秋節はなんといっても子供が主役!
おもちゃを買ってもらえる、とても嬉しい日なのです。そして、仮面をつけたり簡単な仮装をしてお出かけする子供たちに出会えますよ。
作物やフルーツ・紙人形のお供え
秋に収穫される果物や農作物と紙人形を、お供えするのが恒例行事です。
日本でもススキとお団子をお供えするのと同様に、ベトナムではバナナやザボンといった果物やおこわなどをお供えします。
ベトナム人のお宅やお店には神棚があることが多く、そこにお供えしてあるものを見ることができますよ◎
月餅🥮
また、月餅(げっぺい)という焼き菓子をお供えし、食べる文化があります。
英語ではmoon cake(月のケーキ)と呼ばれ、まさに中秋の名月をかたどった形の伝統的なお菓子です。
月餅は普段お世話になっている方に渡す風習があり、ビジネスの場でも、お客様から頂いたり贈ったりと、ベトナムで働く日本人の方にも直接関わるものです。
この後さらに詳しく解説していきます◎
月餅とは…?
どんな食べ物…?
中秋節の日には、“月餅(Bánh Trung Thu:バイン・チュン・トゥ)”をお供えし、食べる習慣があります。
月餅といってもお餅ではなく、小麦粉で作ったずっしりとしたケーキのような焼き菓子です。
しかし、甘いケーキではなく、中身は緑豆の餡や塩漬けしたうずらの卵、豚肉、ごまなどが入っているものが一般的です。
甘さとしょっぱさが混ざった独特の味なので、好みはあると思いますが、一度トライしてみてはいかがでしょうか?
最近では昔ながらの月餅メーカーに加えて、高級ベトナムチョコレート店のMAROUやコーヒーチェーン店STARBUCKSなども月餅を販売しています。
写真参照元:STARBUCKS VIETNAM Facebook
ケーキの中身もチョコレート餡になっていたり、伝統的な月餅とは異なりスイーツとして美味しく食べやすいものも増えていますよ◎
中秋節の前、1か月ほどしか味わえない期間限定なので、是非試したいですね。
お値段はいくら…?
ただの焼き菓子と侮ることなかれ!なんと…月餅はとても高級品です。
老舗メーカーの月餅は1個当たり500円から、MAROUやSTARBUCKSなどは1個当たり1000円超えという驚きの価格です!
写真参照元:MAISON MAROU Facebook
自分用として購入するには少し悩むお値段ですが、丸ごと一つ食べるにはボリュームがあるので、お友達や家族とシェアすることをお勧めします。
この月餅を家族やお客様に贈るのが習わしですので、営業職の方はこの時期になると挨拶回りに忙しくなります。
まとめ
ベトナムの中秋節がどのような行事なのか、ご理解いただけましたでしょうか?
ベトナムには子供が多いため、子供が主役の行事になると街中が賑やかでエネルギーに溢れます。
筆者自身、初めて実際に参加してみたときには、想像以上の活気で驚いたことを今でも覚えています。
2023年の中秋節は9月29日の金曜日です。金曜日ということもあり、きっと当日は例年以上に盛り上がること間違いなし。
実際に体験してみると、いろいろな発見がありますので、是非当日はお出かけしてベトナムの文化や伝統に触れてみてください。